artscapeレビュー
戦争/美術 1940-1950 モダニズムの連鎖と変容
2013年09月15日号
会期:2013/07/06~2013/10/14
神奈川県立近代美術館葉山[神奈川県]
神奈近葉山の開館10周年記念展。10周年なのに、なぜはるか昔の第2次大戦を挟む40年代展を企画したのかというと、神奈近が鎌倉に開館するのが1951年なので、それ以前の10年間を振り返ってみようということらしい(出品作品の制作年は1935~60年)。まあ理由づけなんかどうでもいい。興味があるのは、戦争画とそれ以外、とくに敗戦後の絵画との対比だ。ところが予想に反して戦争画は少なく、東京近美所蔵の「作戦記録画」は藤田嗣治の《ソロモン海域に於ける米兵の末路》と《ブキテマの夜戦》、山口蓬春の《香港島最後の総攻撃図》のわずか3点のみ。さすがに戦中は戦争画ではなくても戦争に関連する絵が多いが、日常的な主題の絵も少なくない。ざっくりいうと、日本の美術史は40年代に戦争画が割り込むによって戦前と戦後に分断され、しかも戦争画を抜いたら戦前・戦後は「前衛」によって接続可能だと思っていたが、そんな図式的にきっちり変化したわけじゃなく、グラデーションのように徐々に変化していったことがわかる。サブタイトルの「連鎖と変容」はそういうことだった。
2013/08/11(日)(村田真)