artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
朝鮮通信使歴史館
朝鮮通信使歴史館[韓国]
凡一洞(ポミルドン)近くに最近できたばっかりという新しい歴史館。ここは江戸時代に朝鮮から12回にわたって派遣された通信使について理解するための場所で、BankARTが「続・朝鮮通信使」プロジェクトを進めているので訪れてみた。従来の博物館のようにカビ臭い遺物を並べるのではなく、CGアニメや3D映像などのマルチメディアを駆使して子どもにもわかりやすく伝えようとの意志が感じられる。とはいえ、そもそも朝鮮通信使なるものに関心がないうちのガキどもには猫に小判か。本来の機能を無視して映像のボタンをピコピコ押して遊んでる。もう行くぞ。
2012/07/25(水)(村田真)
第38回釜山美術展
会期:2012/07/20~2012/08/19
釜山市立美術館[韓国]
家族で海外旅行、というとゴーセーだが、もっとも近い釜山なら国内旅行より安上がり。しかも釜山といえば隔年で国際展(釜山ビエンナーレ)が開かれる文化都市でもある。今年はビエンナーレの開催年であるのだが、残念ながら展覧会は9月からで、その反動というべきか、この時期アートは街から一掃されている感じ。そもそも釜山は人口340万人を超す大都市にもかかわらず、目の前に海水浴場が広がる観光地なので、夏はリゾート気分全開なのだ。だから家族で来たんだけどね。しかし唯一の美術館である釜山市立美術館でも現代美術はお呼びでなく、全館を使って公募団体展みたいな「釜山美術展」しかやってなかった。これは絵画、彫刻、デザイン、書などを集めたもので、ジャンル分けも作品傾向も日展や二科展とよく似ている。近年の韓国の文化政策は急進化を遂げていると聞いていたが、やっぱりこんなものもまだやってるのね。街のギャラリーものぞいてみたけど、いまはリゾート客向けなのか版画や小品展しかやってなかった。
2012/07/24(火)(村田真)
奈良美智──君や僕にちょっと似ている
会期:2012/07/14~2012/09/23
横浜美術館[神奈川県]
年とると時のたつのが早く感じられるもんで、また横浜美術館で「奈良美智展」かよ?と思ったら、前にやったのはもう11年前の話。そういえば同時期に第1回横浜トリエンナーレが開かれていたっけなあ。しかし、横浜に大して縁もゆかりもない現役作家が、10年ちょっとのあいだに同じ公立美術館で2度も個展を開くというのは、やっぱりどうなのよ。いっそトリエンナーレみたいに横浜美術館では何年おきかに「奈良美智展」をやると決めちゃったら? などと思いつつ会場に入ってびっくりした。去年の横浜トリエンナーレの記憶がよみがえってきたからだ。なんと、ヨコトリ期間中に美術館前に陣取っていたウーゴ・ロンディノーネみたいな彫刻があるではないか。もちろんこれも奈良の作品なのだが、素材といい大きさといい色合いといい触感といい、よく見れば台座まで似ているのだ。これが意図して似せたかどうかは知らないけれど、結果的にヨコトリを想起させたのは事実。あとは絵画、ドローイング、オブジェなどの出品だが、作品はともかく展示がすっきりしていてとてもきれい。これはホメてあげたい。
2012/07/20(金)(村田真)
唐仁原希「さよならのあとに」
会期:2012/07/07~2012/07/29
トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]
最近まぶたに瞳をかいて目を異様に大きく見せるメイクが流行ってるらしいが、そんな巨大目の少女ばかりを描いた作品。ベラスケス風の額装された肖像画もあれば、下半身が鹿だったり魚だったりする怪物風もあるし、また、ロココ調の食卓につく群像やバスに浸かる人魚の群像もある。日野之彦的な顔と、金子國義風の趣味が混ざった世界。それにしても今回のワンダーサイトは4人とも(ミヅマの岡田裕子を入れれば5人とも)女性で、しかも全員が生理的に訴えてくるような作品だったなあ。
2012/07/19(木)(村田真)
及川さとみ「裏山しい冒険」
会期:2012/07/07~2012/07/29
トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]
乳房の写真ばかりを貼り合わせた女性像、真珠を積み重ねてできた樹木、イチゴのショートケーキの山……。ちょっと草間彌生のオブセッショナルアートを思い出す、そんなコラージュが暗くした展示室の壁に直接貼られている。片隅に懐中電灯が置かれ、それで照らし出して見る仕組みだが、こういう演出はぼくのなかでも賛否両論ある。
2012/07/19(木)(村田真)