artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
APARTMENT/もえあがる緑の木 安達裕美佳×湯浅加奈子
会期:A: 2012/06/12、も...: 2012/06/19~A: 2012/06/17、も...: 2012/06/24
UTRECHT[東京都]
開店時間とほぼ同時に入店。美術書をはじめ衣服や雑貨などをあつかうお店のようだが、ずいぶん人がいる。このお店はそんなに人気があるのかと思ったら、どうやら大半はスタッフか関係者らしい。そんなことより、肝腎のギャラリーがない。スタッフに聞くと、テラスにある小屋がそれだという。なるほどテラスには粗末な公衆便所みたいな掘建て小屋が建っていた。なかに入るとなにもない。と思ったら、細工した銀紙やメモ書きみたいな絵が貼ってあったり、糸で紙を吊るしていたり……ひとことでいえば、ショボ! この掘建て小屋を含めた全体をインスタレーションとしてつくったならホメてやりたいが、そうでもなさそうだ。まあショボイ小屋に合わせてつくったんだろうけど、ショボすぎるぞ。
2012/06/21(木)(村田真)
「悪夢のどりかむ:アニメ・エクスプレッショニスト・ペインティング」展
会期:2012/05/26~2012/06/21
Kaikai Kiki Gallery[東京都]
カイカイキキ主宰者の村上隆みずからがキュレーターを務める渾身の企画展、いろんな意味でとても刺激的だった。これは村上の長年の課題である「おたくと現代美術をどのように融合させ、西欧式現代美術の世界へ軟着陸させ、普遍性を持たせるか」へのひとつの解答と見ることができる。つまり、アニメやマンガなどのオタク文化と、美術の王道であるペインティングを接合すること。いいかえれば、日本的コンテンツを西洋的形式に着地させること。10年前だったら荒唐無稽と一笑に付されていたであろうこんな課題も、いまなら少しは現実味を帯びて迫ってくる(それも村上の孤軍奮闘によるものだ)。出品作家は6人で、まさに「アニメ・ペインティング」と呼ぶしかない作品が開陳されている。でも成功しているかというとそうでもなくて、たとえばMr.はコンテンツ(オタク的図像)に重心が傾いて絵画的にはどうかと思うし、JNTHEDはただ図像を巨大化しただけでサイズの意識が希薄だ。オタク的にも絵画的にも成功しているのは、いやそうではなく、内容と形式がうまくかみ合っているのは、最年少のおぐちだ。色彩こそ抑制されているものの、そのペインタリーな線描や正確無比の形態把握は、水と油のようなふたつの世界を見事に架橋しているように見えた。しかしこんなのが世界のアートマーケットを席巻する日が来るのかなあ。
2012/06/19(火)(村田真)
笹川治子「case.A」
会期:2012/06/01~2012/06/17
Yoshimi Arts[大阪府]
ギャラリーに足を踏み入れると、防護服に身を固めた人の等身大写真や、汚れたコンピュータの端末やチューブでつながれた怪しげな機器類、原子力を想起させる「A」や核の記号が刻まれた金銀のメダルなどがところ狭しと並ぶ。一見、最近ありがちな反原発ネタかと思うが、そのわりに緊張感も悲壮感もなく、むしろちょっと間が抜けて楽しげですらある。たしかに防護服を着た人の写真はあるが、よく見ると顔は溶接工の使うマスクをつけてるだけで隙間だらけだし、チューブでつながれた機器類はたんなるハリボテでなんの用もなさない。メダルにいたっては厚さもまちまちな石膏製で、金と銀の塗料を塗ってあるだけのシロモノ。しかもそれらが雑然と置かれているのではなく、なんとなく等間隔に並べられているため、学芸会の発表のような場違いな楽しさを感じてしまうのだ。これは原発推進派はもちろん、反原発も脱原発もすべて相対化してしまう底意地の悪いインスタレーションではないか。
2012/06/16(土)(村田真)
新incubation4「ゆらめきとけゆく──児玉靖枝×中西哲治 展」
会期:2012/06/16~2012/07/13
京都芸術センター[京都府]
久々に京都へ。「インキュベーション」はベテランと若手を対比的に見せる意欲的な(ときに残酷な)シリーズ。まず児玉靖枝だが、これまでの木を描いた絵のほかに、海中を描いた新作《わたつみ》も出している。木のほうは、フラットな地塗りの上に1本の木の枝や葉を描いた単体描写と、森林のように1本1本の木が識別できない情景描写の2通りあって、児玉の関心のありようがうかがえる。《わたつみ》のほうは海中を横から見たもので、画面中央部が深緑におおわれ、上下は色が少し薄くなっている。つまり海面と海底がわずかに示唆されており、画面の中央部が奥深く感じられる。絵画はたいてい垂直に立てられ、水平方向に広がる奥深さを表わすものだから、これは絵画空間そのものへの関心に基づいていると推測できる。それに対して、中西哲治の関心のありようはまったく異なっている。中西は工事現場や街角など身近な都市風景を大胆なストロークで描く。いや、都市風景を描くというより、風景をモチーフに「内的感情」を表現しているというべきかもしれない。もとより大きな筆で激しく描けば「感情的」と見なされ、抽象に近づいていくが、中西の絵はその一歩手前で踏みとどまっているような印象だ。どちらも見ごたえのある展示。関西ってなんでこんなに絵画の意識が高いんだろう。
2012/06/16(土)(村田真)
「エル・グレコ展」記者発表会
会期:2012/06/15
スペイン大使館B1Fオーディトリアム[東京都]
10月から大阪の国立国際美術館で開かれる「エル・グレコ展」(来年1月からは東京都美術館)の記者発表会。エル・グレコと聞いても、日本では25年ぶりといわれても、心ときめかないのはなぜだろう。たぶん絵がヘタだからだと思うんだ。近代以降はともかく、16世紀にこんなにヘタでよく美術史の一線に残ったもんだと感心する。なぜなのか? ただその一点の興味でこの展覧会は見逃せない。それはともかく、なんで最近の展覧会には女優がくっついてくるんだ? キャンギャルならぬオフィサポ(オフィシャルサポーター)と呼ぶらしいが、「マウリッツハイス美術館展」は武井咲、「ベルリン国立美術館展」は音声ガイドも務めた小雪で、今回は森口瑤子だ。だれ? 森口瑤子って。
2012/06/15(金)(村田真)