artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
サイレント・エコー──コレクション展II
会期:2011/09/17~2012/04/08
金沢21世紀美術館[石川県]
太平洋側の魚は安心して食べさせられないという子ども思いの妻の提案で、日本海側の魚を求めて(もちろんそれだけの理由だけではないが)金沢へ。2、3日前からの大雪で市内は銀世界、息子は大喜びだがおとーさんのムスコはオフクロとともに縮こまってる。まずは21世紀美術館へ。最初に入った展覧会は、アニッシュ・カプーアやツェ・スーメイに加え、グラフィックデザイナーの粟津潔、具体メンバーの山崎つる子らが出品。なんか脈絡のない人選で方向性の見えない展覧会だなあと思ったら、コレクション展だった。久世建二や角永和夫ら地元作家も着々とコレクションに加えておるな。
2011/12/28(水)(村田真)
押忍!手芸部と豊嶋秀樹『自画大絶賛(仮)』
会期:2011/11/23~2012/03/20
金沢21世紀美術館[石川県]
タイトルを見ただけではどんな展覧会か想像もつかないが、でも実際に見てみるとタイトルどおりとしかいいようのない展覧会。「押忍!手芸部」は手芸部長の石澤彰一が手芸経験のない「男前部員」7人と結成した部活動で、その成果を豊嶋秀樹が展覧会に組み立てていく。いろいろ遊びもあって楽しいといえば楽しいのかもしれないが、手芸には興味のないおじさんには「こんなもの美術館で見せられてもなあ」だ。
2011/12/28(水)(村田真)
寺田コレクションの若手作家たち
会期:2011/10/18~2011/12/25
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
企画展示場の上階で開かれているコレクション展。寺田とは代々この辺の土地を所有する大地主さんで、オペラシティの出資者であり、そこで得たお金で購入した作品をアートギャラリーに寄贈しているコレクターでもある寺田小太郎氏のこと。寺田氏が集めていたのは当初、難波田龍起はじめ日本的モダンアートや具象絵画が多かったような気がするが、これを見るとごく最近の若手作家までカバーしていることがわかり、なんとも心強い。展示は山本麻友香から伊庭靖子、小西真奈、蓜島伸彦、そして84年生まれの時松はるなまで、50歳以下の画家たちばかり。これは驚いた。寺田氏は何歳なのか存じあげないが、ぼくも知らない若手まで目配りしているとは。しかし余計なお世話だが、これは本当に彼のテイストによる収集だろうか。おそらくアドヴァイザーはいるだろうが、なかば公人とはいえ当たり障りのない人気作家ばかり集めていたら公立美術館のコレクションと代りばえしなくなってしまう。個人コレクションは独断と偏見で固めたほうがはるかに価値も高まるはずだし、そこに個人コレクションの意義もあるのではないか。本当に余計なお世話だが。
2011/12/25(日)(村田真)
感じる服 考える服:東京ファッションの現在形
会期:2011/10/18~2011/12/25
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
最終日なので混んでいる。おまけにクリスマスのせいか若いカップルばかりが目立ち、おやじ率は極度に低い。ぼくだって別にファッションを見に来たわけではなく、展示ディスプレイが変わっていると評判だから確認しに来ただけなんです。いちいち弁解することでもないが。ギャラリーに入ると、たしかにヘン。会場は10組のデザイナーの作品ごとにブース分けされているのだが、それが壁で仕切られているのでなく、ほぼ目の高さに設定された梁のような帯状の板で区切られているのだ。そのため、空間的な開放感がありながら隣の作品が目に入らず、とりあえず目の前の作品に集中できるというメリットがある。なるほど、これはよく考えられているなあ、と感心しつつ、しかし作品を見るとき以外は視野の中央部が遮られるわけで、これは想像以上にストレスを感じる。だいたい移動するのにいちいち頭を下げて板をよけなければならないのがメンドクサイ。肝腎の作品は、いわゆる先端のファッションを紹介するといった類のものではなく、ストリート系や社会学的アプローチからファッションを問い直すといったように、思った以上に「ファッション」から遠ざかっていてぼくのような門外漢でも楽しむことができた。だから後にこの展覧会のことを思い出すとき、作品よりまず目の前を遮っていた白い板が真っ先に思い浮かんでしまうのは少し残念ではある。この展示ディスプレイはしたがって、凡庸な展覧会の退屈さを少しでも和らげるために使うべきではないか。
2011/12/25(日)(村田真)
若木くるみ「車輪の下らへん」
会期:2011/12/10~2012/01/21
ギャラリーJinプロジェクツ[東京都]
ギャラリー内に大きな回し車が置かれ、なかで女性がひたすら走っている。髪を前に垂らしているので顔がわからないが、たぶん若木本人だろう(顔を見てもわからないけど)。彼女は岡本太郎賞を受賞した版画家であると同時に、250キロマラソンを完走したこともあるというアスリートでもあるらしい。回し車の外周には風景版画が貼ってあり、ひょっとして東海道53次を走破するつもりだろうか。とにかく毎日ここで走り続けるんだろうな。アートとは関係なく、すごい人だ。
2011/12/23(金)(村田真)