artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ALA Ploject No.16 猪狩雅則

会期:2013/01/16~2013/02/17

アートラボあいち[愛知県]

今年2度目の名古屋。愛知芸文センターでの「アーツ・チャレンジ」に参加する前にあれこれ寄ってみた。まずアートラボあいちの1階では、100号大のペインティングがドーンと2点。ちょっとトボケていて捨てがたいセンスを感じるけど、第一印象は「いまどきありがち」な絵。ありがちな絵だから親しみやすく入りやすいともいえるが、なんだまたか、もっと見たことないような絵を見たかったとも思う。

2012/01/26(土)(村田真)

「水と土の芸術祭2012」プレス発表会

会期:2012/01/25

六本木アカデミーヒルズ スカイスタジオ[東京都]

3年前に新潟市で開かれた通称「みずっち」だが、今年ようやくトリエンナーレとして7月14日からの第2回展開催が決まった。事業はアートプロジェクト、市民プロジェクト、シンポジウムの3つからなり、アートプロジェクトは水戸芸術館学芸員の竹久侑らがディレクターに就任。作品は招待と公募の2本立てで、市内各地に展示していく。参加作家は石川直樹、カミン・ラーチャイプラサート、西野達、原口典之、日比野克彦、藤浩志、吉原悠博、王文志らが決まっている。北川フラムがディレクターを務めた3年前は新潟市内のほぼ全域に作品を点在させたため、見て回るのが大変だったが、今回は万代島旧水揚場をメイン会場にしてもう少しコンパクトにまとめるようだ。今年は7月29日から同じく新潟県で越後妻有アートトリエンナーレも開かれるので、まとめて見に行くぞ。

開港都市にいがた 水と土の芸術祭 2012 URL=http://www.mizu-tsuchi.jp/

2012/01/25(水)(村田真)

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絵画、それを愛と呼ぶことにしよう Vol.8 田中功起

会期:2013/01/19~2013/02/02

ギャラリーαM[東京都]

絵画を巡る10組の連続展の8回め。ほかの作家たちは会期が1カ月前後あるのに、田中だけは2週間と短い。本人の都合によるものだろうけど、すでに差異化が図られている。案内状にはその2週間のスケジュールが載っていて、たとえば「ペインティング・トゥ・ザ・パブリック(東近美からαM)」「写生旅行」「持ち寄った絵について話す」といった予定が書かれ、最後に「会期中、会場を訪れるすべてのひとは自分が持って来たほとんどの絵を他のひとと共に展示することができます」と締めくくられている。つまり会場には田中功起の作品だけでなく、さまざまな人たちの持ち寄った絵が飾られてるらしいのだ。アンデパンダン個展とでもいうか。ちなみに「ペインティング・トゥ・ザ・パブリック…」とは、東京国立近代美術館からギャラリーαMまでみんなで絵を持って歩くという参加型のイベント。幸田千依の「歩く絵のパレード」と同じではないか。ま、絵を持って歩くだけならだれでも考えつくことだけどね。会場には少し空きがあるものの思ったよりたくさんの絵が並んでいた。まともに自分の作品を持ってきた人のほか、祖父の絵、なぜか長新太の絵、会田誠展のチラシにチョコッと書いたイタズラ書き、それに田中自身の10代のころの絵まであって、けっこう楽しめた。会田誠で思い出したが、もっとカゲキで、不謹慎で、えげつない絵もあるかと予想(期待)していたけどあまりなかったのは、展示するのが持って来た「すべての絵」ではなく「ほとんどの絵」と限定されていたせいか。展示を拒否された絵があったとしたら見てみたいもんだ。いずれにせよ、「絵画」への愛にあふれたメタ個展だった。

2012/01/23(水)(村田真)

土佐正道 絵画展

会期:2012/01/23~2012/01/29

Chapter2[神奈川県]

明和電機会長の土佐正道による絵画の個展。太陽の塔、瀬戸大橋、厳島神社、東京タワー、みなとみらい地区など、おもに大規模な建造物を描いたグワッシュ画が10点ほど。これらは約10年前に、昭和40年会のメンバーの指導を受けながら半年間で集中的に描いたものだという。それまでほとんど絵筆をにぎったことがなかったらしいが、そのわりにはウマイというか、理数系のきっちりした絵である。なによりおもしろいのは、たとえば太陽の塔なら正面ではなく裏側の黒い顔だけをアップで描いたり、厳島神社なら大鳥居を横から(つまり1本の柱として)描いたり、鳥取砂丘ならラクダに乗るための台をポツンと描いたりしていること。そのユニークな視点と、描写技術のギャップがおもしろいといえばおもしろいが、もう少し制作を続けていればどうなったか見てみたかった。これらの絵を肴に昭和40年会のメンバーが講評する記録映像も上映している。

2012/01/23(月)(村田真)

野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿

会期:2012/01/18~2012/04/02

国立新美術館[東京都]

いま国立新美術館で野田裕示の個展が開かれるというと、「なぜ?」どころか「だれ?」といわれかねないが、70年代に美大に通っていたぼくらの世代にとって野田の名は輝かしいものだった。なぜなら彼は多摩美を卒業した翌1977年に、最年少作家として南画廊で個展を開いたからだ。南画廊とはまだ現代美術を扱う画廊がほとんどなかった当時、もっとも勢いのあった現代美術専門の画廊であり、そこで個展を開くとはもう将来を約束されたようなもの(とぼくは勝手に信じていた)。が、80年代に入ってからはいわゆるニュー・ウェイヴの一群に押されて、野田の名は徐々にフェイドアウトしていく。だから今回の個展は当然70年代の作品から並ぶと期待していたのだが、なぜか省かれ、80年代から始まっているのだ。作品が現存しないのか、それともその後の仕事との整合性がつかないからなのかはわからないが、とにかく70~80年代の美術に関心のある者にはちょっと残念。それでも、ジャスパー・ジョーンズあたりに触発されたレリーフ状の作品から、どこか琳派の屏風を思わせる近年の平面まで、約30年におよぶ140点もの作品は圧巻というほかない。具象的な形態や記号を連想させるイメージは、すでにポストモダニズム絵画に親しんだ目には古くさく感じられるものの、着実に変化していく仕事の展開は十分に納得できた。

2012/01/21(土)(村田真)

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