artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

都築響一「暗夜小路」

会期:2011/11/25~2012/01/09

ナディッフギャラリー[東京都]

「上野~浅草アンダーグラウンド・クルーズ」とサブタイトルに謳う「暗夜行路」ならぬ「暗夜小路(こうじ)」。女装図書館にフンドシ飲み屋、イミテーションゴールドの被せ金歯やキラキラの宝石歯など裏世界が満載だが、圧巻はホンモノそっくりのダッチワイフ。いや最近はこのテのリアルな人形をラブドールと呼び、安価な風船状のダッチワイフと区別するらしい。シリコン樹脂製のナイスバディは触るとウヒョヒョーッ、もっちり感があってたまらんですわ。ただ冷たいのが残念だが(夏はサイコーかも)。下はどうなっちょるかのぞいてみたら、オケケの奥にあるあるオナホールが。指つっこんでみたらちゃんと濡れちょるばい。こりゃケッコー使い勝手がありそうだと感心しつつ素知らぬ顔で階上の本屋にいったら、監視カメラでしっかり見られていた。ラブドール、いまウィキペディアで調べてみたら、シリコン製は高価で一体60万円前後するという。笑ったのは、股間のシリコンは裂けやすいのでムリヤリ広げないようにとか、処分に困ってゴミ集積所や空き地に捨てたら死体遺棄と間違われたとか、自分が死んだら一緒に棺桶に入れてほしいという人もいるらしいが、シリコンと金属でできているので火葬場で焼くことは禁じられてるとか……。人間と似て非なるものゆえに奥が深い。

2012/01/04(水)(村田真)

杉本博司──はじまりの記憶(試写)

会期:2012/03/31

渋谷シアター・イメージフォーラム[東京都]

手づくりの放電装置で印画紙の上に雷を発生させた放電写真、たしか鮭とブロッコリーがおかずの自作弁当、けっこうプリミティヴな手描きのアイディアスケッチ……。試写を見てから3週間後の現在、記憶に残っているのはこの3つぐらい。写真の可能性を限界まで追いつめ、近年は能や建築にまで触手を伸ばす希代のコスモポリタン杉本博司を撮ったドキュメンタリー映画にしては、やけに印象が薄い。それはおそらく、この映画に撮られていることはだいたい知っていたし、それをなんのてらいもなくストレートに撮っているので記憶に引っかからなかったからだろう。逆の見方をすると、記憶に残っているこの3つにはこれまで知らなかった杉本の素顔や、杉本らしくない意外な側面が映し出されているのかもしれない。たしかに仕事場に弁当持参というのは杉本らしくない意外な素顔だが、では放電装置とアイディアスケッチはどうだろう。たぶんこの3つに共通するのは「手づくり」ということではないかしら。杉本の作品や展覧会を見て驚くのは、一分のスキもなくきっちり完璧に仕上げられていて、まるで手の痕跡が感じられないこと。だからこの映画のように杉本の手づくり感を見せられると、わずかながらも心がざわめくのだ。おそらく杉本の完璧な仕上がりを支えているのは、こうした職人的な手づくりの積み重ねなのかもしれない。この映画自体も、よくも悪くも手づくり感にあふれている。

2012/0/13(月)(村田真)

女子美スタイル2011

会期:2012/02/10~2012/02/13

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

女子美の卒業・修了制作選抜展。設営中にチラッとのぞき見したらちょっとおもしろそうだったんで、あらためて来てみたらそうでもなかった。チャラいというか。大先輩の松井冬子を見ならいなさい。

2012/0/13(月)(村田真)

モニーク・フリードマン展

会期:2011/11/23~2012/03/20

金沢21世紀美術館[石川県]

同時開催の企画展とはいえ、「押忍!手芸部」とは打って変わってこちらはフランスの女性作家による絵画展。麻布、綿布、紙などさまざまな支持体を使い、70年代のシュポール/シュルファスをちょっと思い出させる。あえて手芸部との共通点を探せば、どちらも繊維を用いてることかな。織物=ウェブは視覚芸術の基礎だ。コジツケですが。

2011/12/28(水)(村田真)

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ピーター・マクドナルド:訪問者

会期:2011/04/16~2012/03/20

金沢21世紀美術館[石川県]

長期インスタレーションルームと展示室13のふたつのギャラリーを使った長期的プロジェクト。展示室13のほうでは壁4面に描いた壮大な壁画を公開し、無料ゾーンの長期インスタレーションルームでは大小40点ほどのタブローを展示している。市民と交流しながら制作したらしいが、色づかいといい筆づかいといい、いまどきのポップな感覚のなかにもメタ絵画意識がかいま見えて、なかなか見ごたえがある。

2011/12/28(水)(村田真)