artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
DOMANI・明日展
会期:2012/01/14~2012/02/12
国立新美術館[東京都]
今日は開館5周年記念日ということでタダ。「DOMANI」は文化庁の在外研修制度で海外に行った作家たちの成果を発表する展覧会なので、出品作家相互のつながりが希薄なため各作家の個展として見るしかない。塩谷亮のリアリズム絵画や阿部守の鉄の彫刻などを無事通過して、ようやく足が止まったのは最後から2番目の児嶋サコの作品。彼女はウサギだかネズミだか小動物の着ぐるみをつけてパフォーマンスするチャラいアーティスト、と思っていたが、ここではモチーフこそネズミではあるけれど、表現主義的なタッチのしっかりしたペインティングを出しているので驚いた。80年代の新表現主義絵画を思い出すなあ。そして最後が元田久治の廃墟画。既存の建築が廃墟になった想像図ばかりを描いてる画家で、派遣されたメルボルンやサンフランシスコでも鉄道駅やスタジアムを廃墟にしてしまうのが痛快だ、みたいなことを以前にも書いたことがあるなあ。3月から廃墟画の大先輩ユベール・ロベール展(2012年3月6日~5月20日、国立西洋美術館)が開かれるので、比べてみるのも一興かも。
2012/01/21(土)(村田真)
細江英公写真展 第1期 鎌鼬
会期:2012/01/06~2012/01/29
BLDギャラリー[東京都]
この1月から5月にかけて細江の仕事を6期に分けて振り返る回顧展。その第1期が「鎌鼬」だが、読めるかな。カマイタチね。舞踏家土方巽を故郷の秋田の農村で撮ったモノクロ写真集で、1970年に芸術選奨文部大臣賞を受賞した不朽の名作。東北を舞台にした土方の奔放なパフォーマンスを細江のカメラが見事にとらえているのだが、写真集はこのふたりだけでなく、ブックデザインの田中一光、文を寄せた瀧口修造や三好豊一郎、そして被写体となった東北の人々の力が結集された空前のコラボレーション作品になっている。ぼくもほしかったけどなかなか手に入らず(たまに古本屋で見かけてもきわめて高価)、たまたま立ち寄った古書市で安く入手。本の価値を知らない古書市というのは、うれしいけど悲しい。数年前には復刻版も出ている。出品作品は、一辺90センチほどの正方形の黒いパネルにプリントを貼ったもの。周囲に銀が浮き上がっているヴィンテージプリントだ。
2012/01/16(月)(村田真)
CHISATO TANAKA“FLASH BACK NIGHT”
会期:2012/01/10~2012/01/21
ギャラリー現[東京都]
田中千智がアルファベット表記になってる! もともとアルファベット名のアメリカ人でも日本のメディアに出るときはカタカナ表記になるのに、漢字名をもつ者が日本メディアにわざわざアルファベット名で出るのはヘン、という立場ですが作家の意向も尊重しなければなりませんね。とここまでに約130文字を費やしてしまったではありませんか。作品は黒い地に人物や風景や乗り物をザックリ描いた絵が10点ほど。人物はマフラーを巻いてひとりポツンと描かれてる絵が多くてどこか寂しそうだ。いやそれは乗り物にもいえて、船や飛行機は背景がほとんどなく遠望した情景になっており、円形キャンヴァスの作品などは国境を越えて攻撃を受ける北朝鮮の漁船を想起させる。風景はさすがに画面の真ん中にポツンと描くわけにはいかないけれど、背景が黒いので夜景に見え、独特の情感を醸している。福岡と釜山の風景だそうだ。これらのことを彼女自身の心境に結びつけることができるかもしれないし、名前をアルファベット表記に変えたのもそのことと関係しているのかもしれない、などと結論づけるのは早計だが、そのように見るのもひとつの楽しみ方ではある。
2012/01/16(月)(村田真)
白井忠俊 展──千年螺旋
会期:2012/01/07~2012/01/28
INAXギャラリー2[東京都]
あ、この人も名前にトシがついてる。ギャラリーには大きな円筒が2体デーンと置かれていて、表面には半透明のジェッソでウロコを描いた細長い生き物が円環状にのたうっているので、てっきり辰年にちなんで龍だと思ったら、顔はヘビ。なんだろう、ウロボロスか。壁には緑色の三角形が規則正しく貼りつけてある。螺旋を数学的に図表化したものかもしれないけど、理解するだけの知能も気力もない。
2012/01/16(月)(村田真)
新生2012 Vol. 1
会期:2012/01/10~2012/01/21
ギャラリーなつか[東京都]
銀座から京橋に移転後、初めて訪れる。ビルの8階から1階へ。人通りは少なくなったが、作家にとっては作品を搬入しやすくなっただろう。展示室は大中小に分かれていて、銀座より少しコンパクトになったようだ。その第1弾は小泉俊己、高浜利也、母袋俊也の3人展。それぞれ彫刻、版画、絵画とジャンルは異なるが、おそらくトシのつく名前で集めたんじゃないの?
2012/01/16(月)(村田真)