artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

卯展決行

会期:2011/12/16~2011/12/25

island MEDIUM[東京都]

愛☆まどんな、大塚聰、桜井貴という若手美術家3人による同人誌サークル「うさぎっこクラブ」の展覧会。どうしても卯年にやりたいと年末にムリヤリねじこんだから「卯展決行」なんだそうだ。名画とマンガを合体させたり、ルイ・ヴィトン柄の作業着を仕立てたり、廃虚化した秋葉原を描いたり、著作権も既視感もおかまいなしに思いついたことを屈託なく出している。とはいえ、ポコラートのある種の作品のように深層意識を揺るがすものではないし、さりとて手練手管のアートの世界で勝負できるとも思えない。その中途半端な領域で猶予期間を遊んでいるような印象だ。考えてみれば日本の現代美術なんてみんなそうだが。

2011/12/23(金)(村田真)

ポコラート全国公募展 Vol.2

会期:2011/12/03~2011/12/25

アーツ千代田3331[東京都]

ポコラートとはPlace of“Core+Relation ART”の略で、「障害のある人・ない人・アーティストが、核心の部分で相互に影響し合う場」を指す。前回は障害者を対象とした公募展だったが、考えてみれば障害者のみを対象にするというのも(逆)差別的な匂いがするので、今回はその枠を取っ払ったらしい。つまり「健常者」にも道が開かれたわけだが、しかしそうなると基本的にだれでも応募できるわけで、フツーの公募展と変わるところがなくなり「障害者」に不利ではないかとの疑問もわいてくるが、1,267点の応募から選出された237点は大半がアウトサイダー系の作品で占められたので、結果的に「健常者」は引き立て役に回ったといわざるをえない。実際「障害者」と「健常者」と分けるのもじつに居心地が悪いが、しかしその作品を並べてみれば明らかに分けられるし、「障害者」のほうが明らかに心を揺さぶる作品が多い。つまり同じ土俵に並べて不利なのは「健常者」のほうなのだ。そのことは薄々感じてはいたけど、ここまではっきり見せつけられたことはなかったなあ。薄い紙に数字と日付をびっしり書き込んだ柴田龍平《数式》、さまざまな電車をすべて斜め上の同じ角度から記録した森居勲《列車日記》、著作権のうるさいおなじみのキャラをそのまま描いた(ただし形が歪んでいる)若林直季《ディズニーワールド》……。これら壮絶ともいえる孤高の作品群はだれにも真似できない。

2011/12/23(金)(村田真)

韓国建築の新たな地平 NEW HORIZON in Korean Architecture

会期:2011/12/02~2011/12/21

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

韓国の若手建築家16チームの作品を紹介。それぞれマケットと映像を中心としたプレゼンだが、時間がないのでサッと見ただけの印象を記すと、建築そのものより展示ディスプレイの美しさが際立つ。ギャラリー内に照明を仕込んだライトボックスのようなテーブルを2列に並べ、その上に8チームずつマケットを置き、その下から壁に向けて映像を投げるという方法。なるほど、これなら映像とマケットを参照しながら建築を吟味できるし、ほかのチームとの比較も容易だ。

2011/12/21(水)(村田真)

森淳一展「trinitite」

会期:2011/11/24~2011/12/24

ミヅマアートギャラリー[東京都]

彫刻とは本質的に「固まり」の表現であるが、内部が充填している(つまり無垢)とは限らない。石彫は無垢であることが多いが、ブロンズのような鋳造彫刻はたいてい空洞だ(木彫は無垢も空洞もある)。ところが森の彫刻は石彫にしろ木彫にしろ、まるでブロンズ彫刻のように空洞になっている。あたかも彫刻の摂理に挑戦するかのように、あるいは既成の彫刻から脱皮したかのように、外皮だけ残しているのだ。その反彫刻的身振りがおもしろいと思っていたが、今回はさらにそこに重い課題を乗せてきた。ギャラリー中央に鎮座するドクロの面のグロテスクな木彫は、その名も《トリニティ(三位一体)》。その名は不遜にも、1945年、ニューメキシコ州で行なわれた世界初の核実験のコードネームとして用いられ、そのトリニティ計画で使われたのと同じプルトニウム爆弾が、森の出身地である長崎に落とされたのだ。森が生まれる20年も前のことだが。その隣の部屋には既視感のあるマリア像《シャドウ》が飾られている。黒光りするセラミック製のマリアは両目がくり抜かれ、その黒く虚ろな目に見覚えがあると思ったら、長崎の浦上天主堂に残る「被爆マリア」と同じだった。展覧会名の「トリニタイト」とは、トリニティ計画の核実験によって砂が溶融してできたガラス質の物質のことを指すらしい。この《シャドウ》は「被爆マリア」の影であると同時に、高温によって表面が溶融したトリニタイトでもあるだろう。2011年の末尾を飾るにふさわしい作品に出会えた。

2011/12/20(火)(村田真)

丸山常生展──install-action(インスタラクション)という方法

会期:2011/12/12~2011/12/25

トキ・アートスペース[東京都]

壁には東北の被災地の風景写真、被災地で行なった本人のパフォーマンス写真、会期初日にギャラリー内で見せたパフォーマンス写真などが貼ってあり、そのときに使ったとおぼしきテーブルや椅子などが置かれている。「インスタラクション」というくらいだから、パフォーマンス(アクション)を見ないでインスタレーションだけ論じてもあまり意味はないだろう。それよりこれを見ながら思ったのは、被災地をモチーフにした作品の場合、あまりに手際よくきれいにまとめたり、わかりやすく伝えようとしたりすると逆に違和感を覚えるというか、うさん臭ささえ感じてしまうということだ。丸山がそうだというのではなく(よくも悪くもきれいにまとまってないし、わかりやすくもない)、一般論ですが。戦場カメラマンは現場で色彩や構図のことをどれほど意識するのだろう、なんて考えてしまった。

2011/12/16(金)(村田真)