artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

アーツ・チャレンジ2013

会期:2013/01/22~2013/02/03

愛知芸術文化センター[愛知県]

「アーツ・チャレンジ」は愛知芸術文化センターで開かれるコンペで、ぼくも審査員のひとり。このコンペはセンター内のギャラリーのほか、通路や階段脇の余ったスペースに設置する作品を募集するもので、サイトスペシフィックなインスタレーションが期待される異色のもの。審査員は昨年秋に作品のプランで選考し、今回そのプランがどのように実現したかを見届けるわけだ。入選作品10本のうちいくつか挙げると、ひたすら穴を掘り続ける映像を流す戸井田雄のインスタレーションは、地下空間を展示場所に選んで成功したと思う。いまは亡き祖父への思いをテキスタイルに込めた柏井裕香子の私的な作品は、よくも悪くも素朴な味わいが強く出ていた。油絵具を固めて動物や人間像をつくる木村充伯の彫刻は、結果は別にして個人的にもっとも興味を惹いたプランだった。袋小路のような通路に壁紙を貼って絵を飾った鈴木紗也香の展示は、絵画空間と現実空間の出会いの場となったようだ。昭和40年代をこよなく愛す菅沼朋香のレトロな屋台は、吹き抜けに置いたせいか思いのほかこぢんまり感じられた。まあいろいろと変な作品が集まって楽しくなったと思う。

2012/01/26(土)(村田真)

生誕150年記念「クリムト──黄金の騎士をめぐる物語」

会期:2012/12/21~2013/02/11

愛知県美術館[愛知県]

愛知県美の至宝というべきクリムトの《人生は戦いなり(黄金の騎士)》を核に据えた企画展。生誕150年、総出品点数221点というから大規模な回顧展だが、大半はヨーゼフ・ホフマンやコロマン・モーザーらウィーン分離派の作品や資料で占められ、クリムト作品は全体の3分の1程度、しかも油彩画は8点だけで、初期の習作を除けば5点のみだった。というと不満げに聞こえるかもしれないが、いやいや、クリムトの油彩を5点も見られたのはたいへんな収穫というべきだろう。とりわけすんばらしいのは同じ愛知県にある豊田市美の《オイゲニア・プリマフェージの肖像》と、ワシントンの《赤子(揺りかご)》の2点。悪いけど金ばかり目立って顔の見えない《人生は戦いなり》よりずっといい。おまけに今回はモノクロとはいえ、焼失した《哲学》《医学》《法学》の3点の大作の実物大写真まであって、1時間足らずの駆け足で見た割に満足度は高かった。

2012/01/26(土)(村田真)

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植松ゆりか「Revival」

会期:2013/01/25~2013/02/03

スペースプリズム[愛知県]

植松ゆりかは名古屋造形大在籍中の一昨年、「アーツ・チャレンジ2011」に出品した今年23歳のアーティスト。われわれが選んだ若い作家の新作発表を見るのはうれしいことだ。今回もそのときと同じく、クマやネコやパンダのぬいぐるみをキューブ状に固めてスツールにした作品を出している。ファイルを見ると、ぬいぐるみの腹を割いて中身を取り出し、内側にシリコンを塗って固めたらしい。この方法なら生身の動物にも人間にも応用できそうだが、もちろん植松さんはそんなことしない(と思う)。そういえば昔アレン・ジョーンズだったか、半裸の女性があられもない格好で椅子にさせられてる彫刻があったなあ。いまだったら会田誠以上にたたかれるだろうと思ってネットで調べてみたら、60年代当時もフェミニストらに嵐のような抗議を浴びせられたらしいが、なんとその作品が3億2000万円で落札されたそうだ。閑話休題。植松さんはほかにも、小さな額縁内に収めた平面状のネズミ(フラットラット?)や、ふとん代わりにとぐろを巻く大蛇を敷いたベッドも出品。これにはあまり寝たくないなあ。

2012/01/26(土)(村田真)

長者町アートアニュアル2012展

会期:2013/01/23~2013/02/03

アートラボあいち[愛知県]

「アートアニュアル」というからこの界隈を拠点とする若いアーティストたちの選抜展かと思ったら、ブブーッ! 大ハズレ。「長者町アートアニュアル」とは展覧会名ではなく、あいちトリエンナーレを機に発足した毎年継続して活動していく組織体の名称なのだ。だから同展も作品展ではなく、KOSUGE1-16による「長者町山車プロジェクト」を中心とする活動報告展だった。それも重要だけどね。

2012/01/26(土)(村田真)

日韓交流展「Histrorical Parade; Images From Elsewhere」

会期:2013/01/09~2013/02/03

アートラボあいち[愛知県]

2階と地下の2フロアを使って日韓11作家の展示。それなりにキャリアを積んだ作家が多いせいか、チャラい作品は少なく、現実と真摯に向き合う姿勢が目についた。たとえばノ・スンテクはいわゆる光州事件を、高橋伸行はハンセン病をテーマにするなど社会問題に対する意識の高さがうかがえる。また、イ・ウォノはテニスコートやサッカーコートの白線をモチーフにすることで、おそらく韓国にとってもっとも切実な境界線(ボーダーライン)の問題を浮かび上がらせる。しかし日韓関係にまで踏み込む作品は少なかった。例外は、藤木正則の《日が昇る海/日が沈む海》という映像インスタレーション。これは日本側からと韓国側から撮影した海の映像を併置したもので、見た目に同じものでも見る角度や立場によってまったく正反対にとらえられることを示している。もう一歩進めて《日本海/東海》とか《竹島/独島》といった作品をつくって議論ができたら、日韓交流も別のステージに進めるかもしれない(し決裂するかもしれない)。

2012/01/26(土)(村田真)