artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

Sculpture Times #1 FROM NUDE

会期:2011/09/01~2011/09/06

上野の森美術館ギャラリー[東京都]

東京藝大彫刻科の若手教員を中心とした15人のグループ展。「ヌード」といえば、彫刻のみならず美術全般の基本中の基本。だからさまざまなヌードがずらりと並ぶはずだと期待して見に行ったら、裸体像もあるにはあるが、たんに角材を立てたものや、石を彫って家型に組み立てたもの、山岳風景を彫った石彫もあった。ざっと見たところ、裸体像はおよそ半数しかない。だから期待はずれだったかといえばそんなことはなく、だから楽しかったんだけどね。ヌードばかりでなかったのは、タイトルに「FROM」がついてるからだ。この「FROM NUDE」にもっともふさわしいと思ったのが、イチジクの葉をモチーフにした森一朗のセラミック作品。イチジクの葉は「恥」を知った人間が全裸の下腹部を隠すために用いた道具なので、まさに「ヌードから」。さて同展のもうひとつの試みは、展覧会に合わせてタブロイド判の小冊子を発行したこと。『Sculpture Times』の命名もおそらくこの「新聞」にダブらせているのだろう。気鋭の批評家のエッセイや芸術学科の学生の解説を載せているが、残念なのは、なにについて書いてあるのかさっぱりわからなかったり、ハナから人に読んでもらう(理解してもらう)姿勢に欠けた「名文」もあること。モッタイナイ。

2011/09/06(火)(村田真)

I love Hokkaido art──札幌ビエンナーレ・プレ企画から開催に向けて

会期:2011/09/04

新・港村(新港ピア)Dゾーン[神奈川県]

3年後のスタートを予定している札幌ビエンナーレのプレイベントのひとつ。出演は、北海道のB級観光スポットを拡声器でレクチャーするサラリーマン風の山下智博、プロレスの司会者ながらしゃべくりの足らなさを連続受け身でカバーする祭太郎、陶器製の縄文太鼓をみずから焼いて演奏する茂呂剛伸、という3人の大道芸っぽいパフォーマンス。苦笑も含めて笑い声が新・港村に響く。札幌ビエンナーレは大丈夫だろうか……。

2011/09/04(日)(村田真)

UNDER35:奥村昂子 展

会期:2011/09/02~2011/09/14

新・港村UNDER35ギャラリー[神奈川県]

35歳以下の有望なアーティストに発表の場を与える試み。新・港村は広いので、壁さえ建てればいくらでもギャラリーがつくれるのだ。今回はコンペで選ばれた奥村さんの展示。彼女は、独断でいわせてもらえば、幽霊みたいなものをつくる人。出入り口に細工して、ギャラリー内を空っぽにしたり、大地から屹立するのではなく、重力に従って垂れ下がる彫刻をつくったり。今回は動くものを含めて3~4点が展示されていたが、覚えているのは三角形のチーズ型のオブジェだけ。なんでこんな場違いなものを置いたのか理解に苦しんだので覚えているのだが、ふと目を上げると、そこに三角形の出入り口があった。このギャラリー、天井のないホワイトキューブだが、床に接するひとつの角を斜めにカットして出入り口にしている(その正反対の角も三角形に切り取られている)。場違いなチーズは、ひょっとしたらこの三角形に由来するのではないか。外でつくった作品を持ってきてただ置いただけに見せかけながら、じつはその場から発想されたその場ならではの作品だったのだ。これは旧作を運び込んだだけのアーティストが多かった今回のヨコトリへの強烈なアンチテーゼではないかとも思ったが、それはぼくの思い込み。

2011/09/02(金)(村田真)

黒崎香織「SOMETHING TO SEE」

会期:2011/09/01~2011/09/28

INAXギャラリー2[東京都]

へらへらの半紙を縦横2メートル前後につないだ大きな画面に、クレパスでガシガシ描いている。まずその脆弱な物質感とは裏腹のずっしりしたマチエールが特異だ。描かれているのは、食卓の風景をおおい尽くさんばかりの蛾の図であったり、教室内の風景の真ん中に窓の外の風景を鎮座させていたり。モチーフもかなり特異だ。なぜ蛾なのかといえば「とても怖かった」から。「あまりに怖すぎるので克服しようと」思って描くようになったんだそうだ。「好きだから描きました」みたいなどうでもいい絵がはびこる昨今、黒崎の絵のもつインパクトは貴重だ。

2011/09/02(金)(村田真)

浅葉雅子「MAN MADE」

会期:2011/08/29~2011/09/03

コバヤシ画廊[東京都]

菱田春草の日本画をベースに、背景の色や葉のパターンをモダンなデザインに変えた作品。マンガチックなリスや小鳥を配したり、木の輪郭線に糸を使うなど遊び心も見られる。作者には日本画への強いこだわりが感じられるが、それが日本画(または春草)に対する共感なのか反発なのかが見きわめられない。おそらく愛憎なかばするのだろう。そこが曖昧だ。

2011/09/02(金)(村田真)