artscapeレビュー
UNDER35:奥村昂子 展
2011年10月15日号
会期:2011/09/02~2011/09/14
新・港村UNDER35ギャラリー[神奈川県]
35歳以下の有望なアーティストに発表の場を与える試み。新・港村は広いので、壁さえ建てればいくらでもギャラリーがつくれるのだ。今回はコンペで選ばれた奥村さんの展示。彼女は、独断でいわせてもらえば、幽霊みたいなものをつくる人。出入り口に細工して、ギャラリー内を空っぽにしたり、大地から屹立するのではなく、重力に従って垂れ下がる彫刻をつくったり。今回は動くものを含めて3~4点が展示されていたが、覚えているのは三角形のチーズ型のオブジェだけ。なんでこんな場違いなものを置いたのか理解に苦しんだので覚えているのだが、ふと目を上げると、そこに三角形の出入り口があった。このギャラリー、天井のないホワイトキューブだが、床に接するひとつの角を斜めにカットして出入り口にしている(その正反対の角も三角形に切り取られている)。場違いなチーズは、ひょっとしたらこの三角形に由来するのではないか。外でつくった作品を持ってきてただ置いただけに見せかけながら、じつはその場から発想されたその場ならではの作品だったのだ。これは旧作を運び込んだだけのアーティストが多かった今回のヨコトリへの強烈なアンチテーゼではないかとも思ったが、それはぼくの思い込み。
2011/09/02(金)(村田真)