artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
OOOO! OH,HOT!?OOOO BL Anthology
会期:2011/01/13~2011/01/18
Hidari Zingaro[東京都]
京都を拠点とする4人のイケメン・アートオーガナイザーOOOO(オーフォー)が企画した「OOOOフェスト」、その第4弾は、美術系腐女子の幕野まえりがOOOOたちのプライベートな共同生活を描いた同人誌マンガを展示。いわゆる「やおい」ってやつでしょうか、メンバーの「恋模様」を赤裸々に暴いた「妄想マンガ」で笑えるのだが、原画とともに展示されているキャンバス画はもっと笑える。肉づけとか陰影といった絵画の基本以前の少女イラストだが、年末に見た「オイルショック!」同様、新鮮といえば新鮮といえないこともない。100号ほどありそうな大作が12万8000円と破格のお値段。しかしこんなのが売れたらどうしよう。
2011/01/14(金)(村田真)
池田学 展「焦点」
会期:2010/12/08~2011/01/15
ミヅマアートギャラリー[東京都]
今回は大作の1点勝負ではなく、22×27センチという同サイズの小品20点を出している。しんしんと降り積もる雪の一粒一粒がドクロになっていたり、うねる高波の波頭が険しい山脈に変わっていたり、巨大なヘビが電車を飲み込んでいたり、どれもミクロとマクロ、自然と人工、生と死といった対立するイメージが複合された見事な細密画。大作の場合どの部分を拡大してもピントが合ってるという驚きがあったが、これはその驚きと楽しみを20に分割した感じだろうか。タイトルの「焦点」にはそんな意味もこめられているのだろう。しかしコストパフォーマンスを考えれば、大作1点つくって売れ残るより、小品をたくさんつくって少しでも売ったほうが安全という計算も働いているのではないか、とも思ったが、いや失礼、人気作家の池田学にはそんな心配は無用だった。今回は1点50万円(+税)で、すでに完売しているのだ。ワオ!
2011/01/14(金)(村田真)
池田龍雄──アヴァンギャルドの軌跡
会期:2010/10/09~2011/01/10
川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]
40年代の自画像から、50年代のシュルレアリスムや社会的テーマを描いたルポルタージュ絵画、60年代の「百仮面」シリーズと「楕円空間」シリーズ、70年代から始まるパフォーマンス《梵天の塔》、70~80年代の「ブラフマン」連作、90年代の「万有引力」シリーズ、そして2000年代の「場の位相」シリーズまで、池田は60年以上にわたり変転を重ねてきた。アヴァンギャルドらしく、ときにオブジェやパフォーマンスにも手を染めたが、一貫して絵画を捨てなかったことは時代相を考えれば驚異的ですらある。しかし併設されている同時代を生きた岡本太郎や山下菊二らの作品と比べると、はたして池田の代表作はなんだったんだろうと考えてしまう。池田の場合「これ1点」というより、シリーズもの(とりわけ初期の)で記憶に残る画家なのかもしれない。ホームランバッターではなく安打製造機というか。
2011/01/10(月)(村田真)
鉄を叩く──多和圭三展
会期:2010/11/13~2011/01/09
目黒区美術館[東京都]
もうかれこれ30年、鉄の塊を叩いてる。鉄の塊はときに1トンを超えるというから、素人が叩いたところでビクともしないが、彫刻家が大きな玄能で何百回も何千回も叩けば、表面はゆがみ、輝き出してくる。おもしろいのは、そのへんで止めること。叩きすぎてなんら別のかたちにしたりしない。作業としては鉄をひたすら叩くという単純作業で、その効果は鉄の表面をこんもりと輝かせるだけ。鉄のかたまりは高いし、身体には応えるし、持ち運びは不便だし、作品が次々売れるとは思えないし、ストックするにも大変だし、端から見ればいいことなどひとつもないように思える。それなのに、いやそれだからこそ、よくこんなことを30年も繰り返してきたもんだとつくづく感心する。
2011/01/08(土)(村田真)
西田菜々子 展
会期:2011/01/07~2011/01/16
OギャラリーUP・S[東京都]
こちらはさらに若いペインターで、いっそう興味深い作品をつくっている。モチーフは和風の部屋や庭の片隅のようだが実景ではなく、唐突に掛け軸や屏風が描かれていたりする。そのシュールな情景にも惹かれるが、なにより魅力的なのはくすんだ色合いとモケっとした筆運びだ。ほしいと思った。が、その絵はすでに売約済み。
2011/01/08(土)(村田真)