artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
しんぞう×窪澤瑛子 二人展「荒野をおよぐ land swimming」
会期:2010/11/20~2010/12/12
竜宮美術旅館[神奈川県]
和洋折衷のドキッチュなラブホを改装した竜宮美術旅館。この魅力的な場所で注目されるには場所以上に作品が魅力的でなければならない。しかもこういう場所では絵画よりも、サイズや形態が可変的なインスタレーションのほうがふさわしい。絵画にとってはハードルが高いのだ。しかし今回しんぞうの絵画はそれをクリアしていたように思う。それはおそらく、彼女(しんぞうは女性だった)の絵が死体のような不吉なにおいを漂わせているからであり、それが性=生を象徴するラブホの空間と拮抗しえたからではないか。インスタレーションの窪澤はまだ力不足の感がぬぐえない。経験の差か。
2010/11/22(月)(村田真)
大野一雄フェスティバル2010
会期:2010/11/19~2010/12/12
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
今年6月1日に103歳で亡くなった大野一雄の、舞踏公演の記録映像や新聞記事などのアーカイブを公開。今日は初日なのでオープニング公演「ハレルヤ!」が開かれた。1番手は笠井叡。60代後半とは思えないキレのいい身体と動きで、鈍足の暗黒舞踏を吹き飛ばしてくれた。と思ったら、ふっくらしたニコニコ顔のおばあちゃんが場所を間違えたかのように歩み出てきた。2番手の高井富子は大野や土方巽にも師事した舞踏家だが、身体も動きも笠井とは対照的で思わず苦笑。もっと笑ったのは、トリの創作ダンスひまわり会。4~5人のおば(あ)ちゃんがシュミーズ姿で登場し、素人丸出しの踊りを披露したのだ。これには唖然。アウトサイダーアートならぬ、アウトサイダーダンスというか。いやーさすが大野フェス、奥が深い。
2010/11/19(金)(村田真)
SO+ZO展「未来をひらく造形の過去と現在 1960s→」
会期:2010/11/13~2010/11/28
Bunkamuraザ・ミュージアム+桑沢デザイン研究所1階ホール[東京都]
桑沢デザイン研究所や東京造形大学を設立したデザイン教育者、桑澤洋子の生誕100年を記念した展覧会。タイトルの「SO+ZO」とは、桑デ(桑=SO)と造形大(造=ZO)出身者が出品しているから。まずBunkamuraの会場を一巡してみて、なんだデザインばっかりで絵画・彫刻がほとんどないじゃないかと思ったら、第2会場の桑デに展示されていた。たぶん第2会場まで足を運ぶ人は少ないだろうから、絵画・彫刻は圧倒的に不利。まあそういう力関係だということだ。もうひとつ、出品は現在活躍中の人たちに限られ、かつて華々しく活躍した(現在は鳴りを潜めている)人や、現在も地道に活躍している人たちに門戸が開かれていないのはちょっと寂しい気がする。ところで、1973年に造形大に入学した新入生は、入学式の混乱からバリ封、機動隊による学生の排除にいたるまで数カ月にわたる一連の出来事を忘れてないはず。それがカタログの年表にまったく記載されてないのはいかにも不自然だろう。年表に載っている1970年の「桑沢共闘ハンスト、バリケード封鎖」に比べればとるにたりない出来事だったのか。
2010/11/18(木)(村田真)
福田尚代
会期:2010/11/01~2010/11/13
ギャラリー福果[東京都]
素材は原稿用紙のみ。そのマス目をカッターで切り抜いて積み重ねれば400個の穴に。それを二つ折りにして立てれば建築模型に。1行分だけ立てればハシゴに見える。福田はこれまで回文とか、言葉や文字を作品化してきた人だが、ここではまったく言葉を使わないのにきわめて「文学的」な作品を展開している。しかし原稿用紙を見るのも久しぶりだなあ。
2010/11/11(木)(村田真)
日本前衛アートの記憶たち
会期:2010/11/06~2010/11/13
慶応義塾大学日吉キャンパス来往舎ギャラリー[神奈川県]
副題に「60、70年代東京画廊カタログアーカイブより」とあるように、日本の現代美術を牽引してきた東京画廊の展覧会カタログや資料を集めたもの。杉浦康平デザインの正方形のカタログがなんとも贅沢! しかしなんでタイトルが「前衛美術」ではなく「前衛アート」になってるんだ? 「前衛」という言葉の賞味期限はせいぜい70年代までであって、一方「アート」は80年代以降にハバをきかせてきた言葉。だから「前衛アート」というとなんかちぐはぐな感じがする。この展示は70年代までが中心だから、やはり「前衛美術」とするべきでしょう。
2010/11/11(木)(村田真)