artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
眼差しと好奇心 Vol.6
会期:2010/11/24~2010/12/25
ミヅマ・アクション(5F)[東京都]
ディレクターの三潴末雄が選んだ20代の4作家のグループ展。注目したのは、プールで戯れる数百人の人間をF15号のキャンヴァス40枚に描いて並べた幸田千依の《代々木・相関図・インターネット》という大作。1枚でも絵として成り立つし、40枚で1点と数えてもいいし、これから縦横に増殖していくことも可能という、それ自体がインターネット的ゆるさと広がりを備えた作品だ。
2010/12/16(木)(村田真)
岡本瑛里 展「謡にまみえに」
会期:2010/11/24~2010/12/25
ミヅマ・アクション(2F)[東京都]
東京藝大大学院に在籍する23歳の作家による油彩とアクリル併用の絵画3点に、鉛筆のドローイング数点を加えた展示。いずれも薄暗い森のなかで童子と幻獣みたいなものがもつれあっている図で、古典的な技法による細密な描写と鮮やかな色彩で独自の世界を築いている。これは時間かかるだろうなあ、会場で本人が公開制作してるくらいだから、きっと間に合わなかったんだろう。このまま精進して道をきわめてほしいと思う反面、すでに完成の域に達した世界を一度ぶっ壊してほしいとも思う。
2010/12/16(木)(村田真)
青田真也
会期:2010/11/27~2010/12/27
青山|目黒[東京都]
おたふくの面、熊や鷲などの木彫りの置物、将棋盤と駒などの表面を削って滑らかにし、色や表示を消したオブジェ。サッカーボールや樹脂製ボトルは元のかたちが残っているのでわかりやすいが、単なる黒い円盤がレコードだとわかるまでは少し時間がかかり、壁に貼られた白い紙がなんであったのかはいまだにわからない。そして、その隣にあった合板が、表面を削った板かと思ったら、壁そのものを削ったものだとわかったときの感激。その奥にはギャラリーの照明のスイッチを削った作品まであった。こうなるともう作品探しは止まらない。スタッフの服や顔まで削られてないか見てしまうのだ。ともあれ、ものの表面を問題にするのは絵画や彫刻の原点だし、もの派にも通じるし、でもどこかポップだしコンセプチュアルだし、実に幅広い問題を提起してくれる作品。
2010/12/16(木)(村田真)
モネとジヴェルニーの画家たち
会期:2010/12/07~2011/02/17
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
タイトルからモネの展覧会と勘違いしそうだが、実際はモネを追従するアメリカ人画家の作品が大半を占める。ジヴェルニーはモネが後半生をすごしたセーヌ川沿いの小村で、モネを慕って世界中の画家たちが訪れた場所。とくに多かったのが印象派を早くから受け入れたアメリカの画家たちで、訪問者の70パーセントを占めたばかりか、ここに住んで制作した画家も50人を超えるほどだったという。日本人もミーハーだが、アメリカ人はもっとミーハーだったのね。しかし、というか、やはりというか、そんなにたくさん訪れたアメリカ人なのに、美術史に名を残すほど有名になった画家はひとりもいないのだ。セオドア・ロビンソンとかジョン・レスリー・ブレックとか言われてもだれも知らないし。追従するのはいいけれど、それで終わっちゃ意味ないよね。目を引いたのは、モネの義理の娘ブランシュ・オシュデ=モネの絵。ほとんどまったくといっていいほどパパの絵と同じなんだもの。
2010/12/12(日)(村田真)
写真分離派宣言
会期:2010/12/11~2011/01/30
ナディッフギャラリー[東京都]
鈴木理策、鷹野隆大、松江泰治、倉石信乃、清水穣という同じ1963年生まれの写真家・写真評論家が結成したグループの旗揚げ展。「写真とは何か、写真の可能性はどこにあるのか。/我々は今、改めて問いたいと思う。」という宣言は威勢がいいのだが、肝腎の写真は小品で数も少なく、いささか拍子抜けの感はぬぐえない。まあ会場が小さいからね。宣言文にメンバーが赤入れしたゲラも出ていて、やはり複数の意見をまとめるのはタイヘンだなと。
2010/12/12(日)(村田真)