artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

「西野達 別名 大津達 別名 西野達郎 別名 西野竜郎」西野達作品集出版記念展

会期:2010/12/17~2011/01/08

アラタニウラノ[東京都]

西野の作品集は見ていて飽きることがない。公共のモニュメントをプライベートな空間に取り込むという作品そのもののインパクトもさることながら、そんなことを思いつく西野の発想とともに、それを許可する行政機関の柔軟な対応にも感動してしまう。今回の展示の中心は、東京タワーの写真にマジックインキで奇天烈なプランを描いたドローイング。東京タワーの隣に通天閣をもってきたり、東京タワーをふたつ並べたり、とんでもない発想を見せているが、恐ろしいのは西野の場合これらが実現しないとは限らないことだ。といっても西野には、クリスト&ジャンヌ=クロードのようにドローイングをせっせと描いて売って資金稼ぎをするみたいな求道者的なところはなく、実現しないで当たり前、実現すればもうけものくらいの軽快さが身上だ。思わず衝動買い。

2010/12/17(金)(村田真)

チャリティー小品展「ART for Two」

会期:2010/12/13~2010/12/25

ギャラリイK[東京都]

世界の子どもを支援するNPO「ワールド・ビジョン・ジャパン」へ寄付するチャリティ展。作品はすべて縦横10センチ程度の額つきフォーマットに統一され、お値段も3,500円均一とオトク。出品は建畠朔弥、内海信彦、加藤崇ら70人。これなら買えそうと思ったが、すでに8割方予約済みだった。しかし全部売れても20万円ちょっとにしかならないのだから、建畠の小品1点売ったほうが手っ取り早いともいえるが。

2010/12/17(金)(村田真)

下平千夏 展「IMPLOSION POINT」

会期:2010/12/04~2010/12/25

INAXギャラリー2[東京都]

ギャラリーに入るとまず異臭に気づく。なんだろうこの匂い。作品は天井、壁、床から奥の1点に向かってヒモのようなものがたくさん伸びて、ラッパのような横倒しの四角錐をかたちづくっている。よく見るとこのヒモは輪ゴムをつなげたもので、異臭はこの輪ゴムの匂いだった。せっかく輪ゴムのような可変的な素材を使うんなら、もっとありえないかたちをつくったらどうだろう。匂いを忘れさせるくらいの。

2010/12/17(金)(村田真)

橋本倫「CALL & RESPONSE」

会期:2010/12/06~2010/12/18

なびす画廊[東京都]

出口王仁三郎、盛宰皇、老僧山人ら日中韓の画人8人の掛け軸に、自作絵画10点を並べた異色の展示。「氾濫する“アート”や“国際展”への違和感」から「東亜三国に於ける逸伝の画人達を橋本が招来し、彼らとの“Call & Response”を試みる、いわば御霊鎮めの企画展」だそうだ。ちょっとイッてる感じだが、興味はこれらの掛け軸をどこで手に入れたのかということ。出口のほかは名前も知らないけど、ずいぶん高そう……。

2010/12/17(金)(村田真)

辰野登恵子 新作展

会期:2010/11/03~2010/12/26

BLDギャラリー[東京都]

もう30年以上も表舞台に立ちながら、作品が色あせたり消費され尽くしたりしない希有な画家。画面に認められるのは、箱を積み上げたようなパターンだったり、棚が交互に並んでいるような奥行きの感じられる空間だったり、血液を顕微鏡でのぞいたような有機的形態だったりと、一見陳腐な具象的イメージだが、結局それは箱にも棚にも血液にも行きつかず、画面の構成要素のひとつとして絵画に奉仕するばかりだ。それは絵画以上のなにものでもないが、絵画そのものであることをまっとうした絵画である、と同語反復に陥ってしまう絵画である。

2010/12/17(金)(村田真)