artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

からす頌──6人展

会期:2010/10/27~2010/11/10

渋谷メアリージェーン[東京都]

渋谷に出てランチしようと思ったら、行きつけのラーメン屋もつけめん屋も行列。そのラーメン屋(冷やし担々麺がお気に入り)の裏のメアリージェーンて店で大谷俊一や藤原彩人ら6人展をやってるのを思い出し、そこで食うことにする。壁にカラスを描いた小品が数点かかっているが、ほかに客もいるので立って見るわけにもいかない。そうこうしてるうちに注文したアサリのパスタが出される。とくにウマイわけでもないが、むき身のアサリはぷりぷりしてるし、妙な調味料など使ってない素朴な味で好感がもてる。いまどき1,000円は安くないが、サラダ、デザート、エスプレッソがついてるので、まあ納得か。結局メシ食いに行っただけだった。

2010/11/05(金)(村田真)

松山賢「からっぽの偽物」

会期:2010/10/23~2010/11/27

ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アート[東京都]

大作が3点。いずれもエロかわいい女の子を中心とした絵だが、それぞれ背景が違う。ひとつはキャンヴァスの代わりに板を使い、木版画のように背景の花模様を彫っている。その花模様は女性のはだけた身体にも彫られ、まるで刺青のようだ。あとの2点は背景が抽象画で、ひとつはモーリス・ルイスのような絵具の垂れ流し風、もうひとつはゲルハルト・リヒターみたいにペインティングナイフでこすったみたいな表現主義風。リヒターは具象と抽象を同時に描き分けたり、抽象画を具象的に描いたり(その逆も)して絵画を散々もてあそんできたが、そのリヒターを女の子がもてあそんでる感じ。でも松山はやっぱり抽象より具象のほうがウマイな。

2010/11/02(火)(村田真)

赤坂有芽「Miniature garden」

会期:2010/10/25~2010/11/06

ASK?art space kimura[東京都]

写真をもとにしたアニメ。暗いギャラリー内の壁にモチーフの鳥や魚や蝶の映像が白く浮かび上がり、まるで夢でも見ているよう(名前の有芽は「ユメ」と読むらしい)。とくに地下の直角に交わる壁2面を使って、一方の壁からもう一方の壁へと移り変わる映像が秀逸。これは現代の「変身物語」だ。

2010/11/02(火)(村田真)

横尾美美「Painting」

会期:2010/10/18~2010/11/13

南天子画廊[東京都]

食べ物を主要モチーフとした絵画。絵画といっても画面に食べ物の模型やフィギュアやシロップの瓶などがくっついてるし、額代わりの白い箱に入ってるのでオブジェっぽい。絵そのものは点描風で、テクニックは父上(忠則)よりはるかに上。なんてことを書くとしかられるだろうなあ。

2010/11/02(火)(村田真)

ヴィック・ムニーズ“Pictures of Paper”

会期:2010/10/22~2010/11/20

nca|nichido contemporary art[東京都]

広重や春信の浮世絵をはじめ、デューラーやソーントンの植物画、ホーマーの海の絵などを切り絵で再現したもの。高さ2メートルを超す大作もあって、近づいて見るとなんだ写真じゃないか。つまり名画を切り絵にして、それを撮影した写真なのだ。そういえばヴィック・ムニーズの作品は、液体で描いた絵にしろゴミで再現した名画にしろ、われわれが目にするのはすべて写真だからな。だいたいこの切り絵の発想、マティスのそれではなく、浮世絵版画の多色刷りにヒントを得たものらしい。そのせいか最終形態としての作品も凹凸があってはならず、フラットな写真でなければいけなかったのかも。でもコンピュータを使って正確に再現されてる分「遊び」が感じられず、いつもの暴力性や奔放さが影をひそめてるなあ。

2010/11/02(火)(村田真)