artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

オノ・ヨーコ「スマイル」

会期:2010/12/06~2010/12/23

ギャラリー360°[東京都]

ギャラリーへの階段を上っているとき、ふとイヤな予感がして足を止めた。これはぼくの苦手な観客参加型の展覧会ではないか。「観客」としてはやはり「客観」的に作品を見ていたいわけで、心構えもないまま作品に巻き込まれるのはゴメンだと。でもここまで来て見ないで帰るのはもったいないので、そのままドアを開ける。と、予感的中(つーか彼女の場合、作品の半分は観客参加だけどね)。会場の中央に椅子とパソコンとプロジェクターが用意され、観客は自分でマウスを動かして自分の「スマイル」を撮影せよとの指示がある。DIYだ。壁にはこれまで撮影した人たちの笑顔が映し出されている。お、篠山紀信がいる、中世古くんやヒコくんもいる。だれそれ? これで撮らずに帰ってしまうと嫌な客だと思われるので、新たにささやかな笑顔をつけくわえさせていただきました。ニコ、パチ。

2010/12/17(金)(村田真)

曽根裕「雪」

会期:2010/12/10~2011/02/28

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

雪の結晶を彫刻した透明な作品が10数点。大きさは縦横高さともに20~30センチほどあるが、これが水晶だというから驚く。雪も結晶だからクリスタルでないといけないのかも。でもこの彫刻の見どころは六角形の結晶のデザインではなく、その下の饅頭みたいにどっしりとした半球状の部分にある。これが透明なので陸に打ち上げられたクラゲを思わせ、その上につながる鋭角的な結晶と好対照をなす。見ているうちに、今度はこの結晶がクラゲの足のように見えてくる。無機質な雪の結晶がいつのまにかひっくり返ったクラゲ(逆さクラゲ)に化けるのだ。もうひとつの展示室にはスキーリフトを彫った彫刻と、スキー場のある山を描いた絵画が展示されている。彫刻はおよそ1メートル立方の大理石からリフトやそれに乗るスキー客、樹木などを彫り起こしたもの。さすがにロープまでは彫れなかったのか細部は大ざっぱだが、中国の翡翠彫刻を思わせるダイナミックさがある。絵のほうはグランマ・モーゼスを彷彿とさせる素朴さ。

2010/12/17(金)(村田真)

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ホリー・ファレル「タミー」

会期:2010/11/25~2010/12/18

メグミオギタギャラリー・ショウケース[東京都]

ドアなどに使われるツルツルの合成建材マソナイトの上に、「タミー」と呼ばれる人形を描いた小品が4点。これはいいなあ。まず、人形が肖像画のようにていねいに描かれているのだが、これがもう少し大ざっぱに描かれていたら生身の少女像と見分けがつかなくなり、逆にもっと細密に描かれていたらよくある写真的リアリズムに陥ってしまうところだ。また、背景はどれも花模様の壁紙を配しているが、これも同様にもっと大ざっぱだったら本物の花が空を舞っているように見え、もっと写実的だったらフラットな装飾にしか見えないというぎりぎりの線上に成り立っているのだ。そして、人形も肖像も英語で「フィギュア」であり、背景(地=グラウンド)に対する図も「フィギュア」と呼ぶから、これはフィギュア中のフィギュア、つまりもっとも正統的な肖像画ということができるだろう。だからいい、というのではなく、直感的にいいのだ。

2010/12/17(金)(村田真)

滝波重人 展「汽水域──向こうの正面」

会期:2010/12/06~2010/12/22

ギャラリーなつか[東京都]

100号ほどのキャンヴァス6枚を縦2列、横3列につないで大画面をつくっている。遠目には、激しいタッチと強烈な色彩のなかから無数の垂直線と水平線が交差しているように見える。近寄って見れば、垂直方向の線は絵具のしたたりが流れた跡、水平方向の線は絵具を平筆で横に伸ばしたカスレだった。絵画の醍醐味を堪能させてくれる大作。

2010/12/17(金)(村田真)

鎌谷徹太郎「proliferation-flower」

会期:2010/12/03~2010/12/23

Gallery Cellar[東京都]

案内状は画面いっぱいに赤や青や黄色の花々で覆われ、とても美しい。しかしこれはいったい写真なのか絵なのか判別しがたいので見に行ったら、そのどちらでもあり、どちらでもなかった。つまり花の写真をベースに絵具でなぞったもので、しかもその花も作者自身がつくった造花だというのだ。かなり手の込んだ作品。

2010/12/17(金)(村田真)