artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

アイ・ウェイウェイ「キューブ・ライト」

会期:2010/11/19~2011/02/19

ミサシンギャラリー[東京都]

東京R不動産で見つけたという町工場跡の空間いっぱいに、一辺4メートルほどのパイプ仕立ての立方体が鎮座。その内部と表面に一辺2センチほどの琥珀色の正8面体を数万個、数珠つなぎにぶら下げている。内部から照明を当てると、巨大なシャンデリアだ。これは夜見たほうが美しいかも。ところでこの作品、この空間に合わせてつくったのかと思ったら、そうではなく、2008年の作品だそうだ。サイズ的にもぴったりだし、オープニングを飾るにもふさわしいし。

2011/01/27(木)(村田真)

SHIBU Culture──デパートdeサブカル

会期:2011/01/25~2011/02/06

西武渋谷店 美術画廊[東京都]

80年代には池袋店に次いでよく通ったものだが、21世紀になって入るのは初めてかもしれないと思いつつ、すっかりブランドショップ街と化した西武渋谷店B館の1階を抜けてエレベータで8階へ。ロリコン系の絵画、イラスト、写真、人形などを集めたサブカルならぬ「シブカル」展が開かれている。中身は、昨夏、森下泰輔の企画で川崎市市民ミュージアムでやった「ガーリー2010」と重なる(出品作家は松山賢らを除きほとんど重なってない)が、デパートでもいよいよこういう作品をあつかう時代になったか、さすが腐っても西武、と少し見直したのも束の間、やっぱりオチましたね。会期途中に中止の知らせ。「展示内容が百貨店にふさわしくない」との苦情が寄せられたそうだ。それじゃなにかい?「おたくは百貨店にふさわしくない」とクレームをつければ店をたたむつもりかい。そんな理不尽な苦情に応じてなにが「サブカル」だ。やっぱり西武はオチるとこまでオチたなあ。いやそんなことより気をつけなければならないのは、こうした苦情が昨年暮れに可決した東京都のいわゆる「性描写規制」条例改正案と連動しているのではないかということ。そもそも苦情を寄せたのは、西武によれば複数の個人だというが、出品作家のひとりによれば「ある公的団体」とのことで食い違っている。いずれにせよ確かなことは、とてもイヤーな流れになりつつあるということだ。

2011/01/25(火)(村田真)

泉イネ「本の記憶」

会期:2010/11/18~2011/01/25

メゾンエルメス1階ウィンドウ[東京都]

エントランスの左右のショーウィンドウにインスタレーション。「語り継がれる“ものがたり”」をテーマとするエルメスだから、「未完本姉妹」シリーズを発表してきた泉イネに白羽の矢が立ったのもうなずける。モンドリアンの幾何抽象のごとき黒い枠の棚に、白、黒、グレーのカバーをかけた本を並べ、絵や写真、エルメスの商品などを配している。全体にシックで思慮深げ。エルメスのディスプレーに使われたとの見方もできるが、ここまでやれればエルメスをインスタレーションに取り込んだというべきだろう。

2011/01/24(月)(村田真)

ザ・ラウンジ

会期:2011/01/13~2011/01/27

ブルガリ銀座タワー8階プライベート・ラウンジ[東京都]

六本木の住宅展示場、椿山荘の庭園、フランス大使館の官舎など、展示空間でない場所ばかりを選んで若手アーティストの作品を展示してきたユニークな団体「団・DANS」。今回、彼らが目をつけたのがブランドショップのビルの上階に位置する、われわれにはほとんど縁のないプライベート・ラウンジ。へえーこんなムダな空間があるんだと感心しつつ、フロア内に点在する20人ほどの作品を見る。音を聞くと色が見えるという共感覚をテーマにした四宮優のピアノ・インスタレーションは労作だが、説明を聞かなければおもしろさが伝わってこない。山田啓貴と田中千智の絵画はすばらしいが、この場所でなくてもいいだろう。その他、この場所から浮いてるもの、ハマりすぎてるものが多数を占めるなか、4本脚の椅子の1本に樹木のような彫刻を施した久村卓の作品は、ひかえめでありながらいじけることもなく超然と自己を主張していて、村田真賞だ。

2011/01/24(月)(村田真)

青木千絵 展──URUSHI BODY

会期:2011/01/07~2011/01/28

INAXギャラリー2[東京都]

黒光りする漆塗りのスタイロフォームから女性の下半身がニョッと出ている。床置きもあれば、天井から吊るされてる(足が床スレスレで着いてない)のもある。こういうのはとまどうなあ。別に下半身にとまどうんじゃなくて、奇妙な形態を見せたいのか、それとも漆の質感を見せたいのか、つまるところ彫刻なのか漆芸なのかがよくわからないのだ。そんなのどっちでもいいという見方もあるが、しかし彫刻を志向しつつ漆の質感にも頼ってる的なあやふやさが感じられ、どうにも歯がゆいのだ。はたして両者はアウフヘーベンされるのだろうか。

2011/01/24(月)(村田真)