artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

竹岡雄二「見せること」

会期:2010/09/03~2010/10/02

ワコウ・ワークス・オブ・アート[東京都]

ミニマルアートのようにシンプルきわまりない彫刻の展示。だが、じつは彫刻ではなく、彫刻を置く台座であったりガラスケースだったりするらしい。彫刻に台座がなくなったのは、抽象彫刻が登場して現実空間とのクッションを必要としなくなったからだが、竹岡の場合は逆に台座から彫刻を取っ払ったものだといえる。まあそれを「彫刻」として見せてるわけだが。やっぱりアーティストは変だ。

2010/09/29(水)(村田真)

村岡三郎 展

会期:2010/09/03~2010/10/09

ケンジタキギャラリー東京[東京都]

「MOSS」「EARTHWORM」「MOSQUITO」などと書かれた長さが微妙に異なる酸素ボンベが数本、床に立っている。なかに入ってるんだろうか。それとは別に、筒が上下2本ついていている鉄の箱があって、下のほうの筒の先っぽにハエの死骸が落ちている。上の筒からハエの卵だかウジだかを入れて孵化したものらしい。「視床」と題されたドローイングもあって、これは目をつぶったときに見える光景(?)を描いたもの。やっぱりアーティストは「変な人」だ。

2010/09/29(水)(村田真)

ウフィツィ美術館 自画像コレクション

会期:2010/09/11~2010/11/14

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

ウフィツィ美術館からヴェッキオ橋を渡ってピッティ宮殿まで続く、非公開の長大なギャラリー「ヴァザーリの回廊」。ここはラスコーの洞窟とともに死ぬまでにいちど入ってみたい場所のひとつ(どちらも筒状なのが意味深)だが、その回廊に保管・展示されている自画像コレクションが来るというので見に行った。「ヴァザーリの回廊」に関しては新しい情報を得られなかったが、自画像コレクションは予想外におもしろかった。まず気づくのは、意外なほど女性画家が多いということ。これに関しては『北海道新聞』(10月11日)にも書いたが、ローカル紙なので繰り返したい。今回新たに収蔵された日本人3人のうち草間彌生も含めて全81点中11点が女性の自画像だが、とくに女性画家が希少だった近代以前に絞ると28点中8点にもおよぶ。おそらく当時、女性画家は100人にひとりもいなかったはずだから、この高率はレオポルド・デ・メディチ枢機卿に始まる初期のコレクターの趣味を反映したものかもしれない。もうひとつは、自画像ならではの遊び心に満ちていること。たとえばアンニーバレ・カラッチは、わざわざイーゼルにのせたキャンヴァスを描き、そこに自分の顔を描いている。つまり自画像が画中画になっているのだ。ヨハネス・グンプは、鏡に映った自分の顔とキャンヴァスに描かれた自画像と、それを制作中の自分の後ろ姿という都合3つの自分を円形の画面に収めている。また、ニコラ・ファン・ハウブラーケンの自画像は、花の絵に囲まれた画面中央からキャンヴァスを破って顔をのぞかせるという奇想天外なアイデア。他人の肖像画ではこんな冒険はできませんね。

2010/09/29(水)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00010186.json s 1223285

クーバッハ─ヴィルムゼン「石の本彫刻展」

会期:2010/09/13~2010/10/02

ギャラリー新居[東京都]

この8月、安藤忠雄の設計でドイツにクーバッハとヴィルムゼンの彫刻美術館が完成したのを記念する展覧会。作品は、世界中のさまざまな石を本のかたちに彫った彫刻が20点ほど。石の本というのは魅力的だ。重いし、開けないし、たとえ開いたとしても(どうやって?)文字が書いてないのが難点だが、文字の代わりにはるかに時代を超えた情報がつまっているし、なにより燃えないのが最大の強みか。大理石の本を見ていて、西洋の古書にしばしばマーブリングの装飾が施されていることを思い出した。マーブリングとはまさに大理石模様のこと。そうか、石が本になろうとしたのではなく、昔から本は石に憧れていたのだ。

2010/09/24(金)(村田真)

ロレンツォ・フェルナンデス

会期:2010/09/10~2010/10/02

ギャルリーためなが[東京都]

なぜかスペインと中国はいまだに極端なスーパーリアリズム絵画が盛んだ。そのスペインの画家の個展。モチーフは身近な日用品を組み合わせた静物だが、そのなかに日本のコインを紛れ込ませていたり、背景にウォーホルをはじめポップアートの絵を配していたり、サービス精神にあふれている。だいたい写真以上に(?)写真そっくりに描こうという心理は、見る人を驚かせ、喜ばせたいというサービス精神に起因しないか。

2010/09/24(金)(村田真)