artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ニューアート展2010「描く──手と眼の快」

会期:2010/09/30~2010/10/19

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

赤羽史亮(26歳)と石山朔(89歳)という63歳違いの2人展。別にふたりの対比を際立たせるのが目的ではなく、ふたりに共通する「描く喜び」を強調した展覧会なのだが、つい比べたくなってしまう。赤羽は厚塗りだがモノクロームに近く、石山は原色を多用するけど薄塗りとか、赤羽はここ2~3年の新作中心に対して、石山は1959年から現在まで50年以上の幅をもつとか。なにもかも対照的という意味では絶妙の人選かも。しかし赤羽はともかく、半世紀以上の画歴をもち、500号の大作に力を注ぐ石山にとっては十分満足できる会場ではないだろう。

2010/10/18(月)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00010621.json s 1224256

宮本三郎1940-1945

会期:2010/07/31~2010/11/28

宮本三郎記念美術館[東京都]

子どもを預けて妻と久々のデートは自由が丘の宮本三郎記念美術館。宮本三郎という名前はぼくのオフクロも知ってたけど、それは後年のバラ色の画家としてではなく、戦時中の戦争画の大家としてだった。つまり戦争画で一躍成功した画家だったわけで、それは裏返せば敗戦後の再出発がいかに困難なものであったかを物語ってもいる。藤田嗣治なら戦前から大家だったから帰るべきところがあったかもしれないが、宮本は戦争記録画によって名を高めた画家だから帰るべき場所がない。戦後の闇はさぞかし暗かっただろう。晩年のバラ色はその反動か。同展は1940~45年を中心に、戦前の滞欧中の作品から戦争記録画、敗戦後の作品まで激動の時代を振り返るもの。

2010/10/17(日)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00009867.json s 1224255

ホア・キン「Thinking」

会期:2010/10/12~2010/11/13

メグミオギタギャラリー[東京都]

ホア・キンて「スター・ウォーズ」に出てきたような気がするが、中国の画家。黒地にそこだけ厚塗りで裸のサルを描いてる。黒地は黒板のつもりか、E=mc2などの数式のほかたまに漢字も書かれ、作者が中国人であることがわかる。テクニックは上等だし、絵としても魅力的。やっぱり中国は奥が深い。

2010/10/15(金)(村田真)

向山裕展「石室・現像」

会期:2010/10/12~2010/10/23

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

打ち上げられた半透明のクラゲ、サンマにコスモスの花、魚灯籠、イカめしなどを描いた絵のほか、透明アクリルによるノレソレ、樹脂製の巨大なイカの甲なども出品。たとえ賛同者は少数でも、一貫してブレない趣味に敬意を表したい。ぼくも少数派だ。

2010/10/15(金)(村田真)

ホキ美術館「開館記念特別展」

会期:2010/11/03~2011/05/22

ホキ美術館[千葉県]

11月3日、千葉市の郊外にオープンする写実絵画の専門美術館。オープンに先立って行なわれたプレスツアーに乗ってみた。東京駅からチャーターバスで1時間ちょっと、外房線土気駅から少し離れた新興住宅地の端っこにある。建物は長さ100メートルくらいのゆるやかな弧を描く角柱を横に倒していくつか組み合わせた斬新な設計。斬新なわりに目立たないのは高さ(7メートル)を周囲の2階建て住宅に合わせ、色もコンクリートのグレーに抑えたからだろう。でもそれが住宅地と公園のあいだに立ちふさがる長大な壁に見えないこともないが。しかしこの長大な角柱はギャラリー空間としてはきわめて合理的だと思う。もともとギャラリーは教会に付随していたアーケードや回廊のことだったし(「画廊」という訳語に名残をとどめる)、展示した作品を歩きながら見ていくには最適だからだ。内部は、真っ白い壁をゆるやかに波打たせ、鑑賞者の視野に変化を与えている。鑑賞空間としては理想的だと思う。が、そこに展示される中山忠彦、野田弘志、森本草介といった人物を中心とする写実絵画にふさわしいかというと、そうでもないような気がする。こうしたモダンなホワイトキューブ(というよりホワイトチューブ)の空間には額装した具象画より、額のない抽象画のほうがはるかに映えるはずだからだ。

2010/10/15(金)(村田真)