artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

岩崎貴宏

会期:2010/10/22~2010/12/04

アラタニウラノ[東京都]

これまでのように布の糸を解いて高さ10センチくらいの塔を建てる作品のほか、今回はマクドナルドの包装紙からロゴを切り抜いて看板のように立てたり、コンビニの制服からマークだけをはずして立ち上げたりしている。木の枝に地名を書いた作品もあるが、これは枝の分かれ具合に合致する道を探し出して地名を記したもの。印刷物を切り抜いて立ち上げたり、枝を道路に見立てるアイディアはほかにもだれかがやってるが、それらを床にちりばめて資本主義を象徴するひとつの都市を築いてしまったところがおもしろい。

2010/11/02(火)(村田真)

菊池絵子

会期:2010/10/25~2010/11/06

OFFICE IIDA[東京都]

相変わらず小さな紙に鉛筆でラクダやケーキや消しゴムを脈絡もなくコソコソッと描いてる。今回は極小とはいえキャンヴァス画も出品。菊池は芸大教官による「絵画思考」展にも参加していたが、O JUNの教え子と聞いて納得。この所在なさげな空白感が共通しているのだ。しかし気になるのは、画面の隅にしばしば走る縦の線。これはどうやら紙(画面)の端っこだったりノートの綴じ目だったりするらしい。つまり、単に絵を描いてるのではなく、「絵を描いてる」場そのものを描いてるというか、「絵を描いてる」行為そのものを相対化しているというか。大げさにいえば「メタ絵画」。描かれている「カワイイ」イメージにだまされてはいけない。これはとても「クール」な絵なのだ。

2010/11/02(火)(村田真)

東京ミッドタウンアワード2010

会期:2010/10/28~2010/11/03

東京ミッドタウン・プラザB1Fメトロアベニュー展示スペース[東京都]

アートとデザインのコンペ受賞作品を、ミッドタウンと六本木駅をつなぐ通路とショーウィンドーで展示。アート部門の受賞作品は4点で、グランプリはきのしたがくの《春夏秋冬東京動画絵巻》。東京の四季を縦長の4画面に映し出した浮世絵風アニメで、よくできているし楽しいけど、どこがアートなんだって気がしないでもない。それは準グランプリ作品にもいえることで、妙な脚をした羊の群れと「あ」の字のなる木を組み合わせたインスタレーションなのだが、なにがおもしろいのか理解できなかった。佳作は2点で、1点は空(と雲)を延々と映し出す石山和広の映像、もう1点は、どういう原理かわからないが虹を現出させる井口雄介の装置。どちらも自然現象を再現したもので、なんとなく似ている。作者はふたりとも武蔵野美大の建築科出身で、審査員のひとりの教え子であることも共通しているが、それはさておき、ぼくはショーウィンドーの垂直面に大空を映し出した石山の映像にグランプリをあげたい。デザイン部門のほうは、お花見のときに桜の木を囲むように敷けるドーナツ型のシートとか、お皿の模様が描かれたティッシュペーパーとか、四葉のクローバーだけを見つけ出すアプリとか、おもしろくて役に立つ(?)アイデア作品がいっぱい。でもぼくはなんの役にも立たない空の映像のほうが好きだ。しつこいね。

2010/10/30(土)(村田真)

第42回「日展」

会期:2010/10/29~2010/12/05

国立新美術館[東京都]

毎年恒例の日展見物も10回を超えた。展示作品は10年、いや100年一日のごとしなので、見た感想は5年前も10年前も変わらない。だから見ないで書いたとしてもハズレはない。裏返せば、もはや見る必要もないということだ。そのことを確認するために今年も足を運ぶなう。

2010/10/30(土)(村田真)

名和晃平「Synthesis」

会期:2010/09/24~2010/10/30

SCAI THE BATHHOUSE[東京都]

手前の部屋には壁に雨模様みたいな粒々をびっしり描いた紙が貼られている。一見プリントかと思ったが、近づいてみると、コーヒーを1滴ずつこぼした跡みたいな偶然のきれいな円になっている。どうやってつくったんだろう。奥の部屋には透明な球をまとった鹿の全身像と首から上の剥製が計3点。例のヤツか、と思ったら、なんか変。脚も角も異常に多い。2匹分をダブらせているのだ。もともと表面に球を貼りつけて輪郭を曖昧にした上ダブって見えるから、乱視になったのかと思った。逆にいえば、この作品は物体のほうを乱視化したものだといえる。

2010/10/29(金)(村田真)