artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2010

会期:2010/08/21~2010/10/31

愛知県美術館、名古屋市美術館ほか[愛知県]

コンペの審査が予定より早く終わったので、トリエンナーレを見る。愛知県美術館にも内覧会のときにいくつか見逃していた作品があったが、今回見たかったのは納屋橋会場のヤン・フードンの作品。ボウリング場として使われていた広い空間に十数台の時代がかったフィルム映写機を置き、四方の壁に映画を映し出すというインスタレーションだ。映像はアクションものや恋愛系のモノクロ映画で、既存のフィルムなのか作者が撮ったものなのか知らないが、いずれにせよ断片的なシーンを繰り返す。客席がないので観客は立ったり座ったり、隣の壁に移動したりしながら勝手に見ている。なにか野外上映会みたいな雰囲気で、映写機の音や熱までもノスタルジックに感じられる。映画の内容も上映形式も、国際展にありがちな映像作品の対極を行こうとしているようだ。

2010/10/03(日)(村田真)

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石上純也──建築のあたらしい大きさ

会期:2010/09/18~2010/12/26

豊田市美術館[愛知県]

午後から愛知県芸術文化センターでコンペの審査があるため、早めに家を出て午前中に豊田市美へ行く。石上は今年のヴェネツィア・ビエンナーレ建築展で金獅子賞をとり、資生堂ギャラリーでも個展を開くなど、いまもっとも旬の建築家。最初の部屋の《雲を積層する》は、細い針金を高く組み上げ、あいだに薄い布を幾層にも敷いた建築。これはアリから見た雲のイメージをスケールアップしたもの。ちゃんと自立してるからスゴイ。でも最後の大きな展示室の《雨を建てる》はもっとスゴイ。太さ0.9ミリの柱54本を太さ0.02ミリのワイヤーで支えるという超絶プランだ。が、オープニング当日にあえなく倒壊。ぼくが見に行ったときは修復中だった(その後完成したという)。ヴェネツィアでも同様の作品を組み立て、同じく倒壊したらしい。こんな建築家に設計を頼む人っているんだろうか。そもそも彼を建築家と呼んでいいのか。脱建築家とか。

2010/10/02(土)(村田真)

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没後120年 ゴッホ展

会期:2010/01001~2010/12/20

国立新美術館[東京都]

日本ではドクメンタ並みに約5年に一度の割合で開かれてきたゴッホ展。今回は没後120年ということで、「こうして私はゴッホになった」とのサブタイトルもつけられている。展示を見ていくと急に絵がうまくなったなあと思う瞬間があるのだが、それはゴッホじゃなくて、彼が模写したり彼に影響を与えたりしたミレーとかファンタン=ラトゥールだったりして、なるほどこうした画家たちのこんな作品に感化されて彼は「ゴッホ」になったのかと納得した次第。とりわけアントン・モーヴとかファン・ラッパルトとかモンティセリといったゴッホが敬愛していた(が、ゴッホの伝記以外ではあまり名前を聞かない)画家たちの作品に触れることができて、ゴッホ作品により近づけたように思う。ところで今回、出品作の目玉でもある《アルルの寝室》を原寸大で再現しているが、これは森村泰昌からの「逆輸入」だろうか。おもしろいけどあまり意味あることとは思えない。出品はファン・ゴッホ美術館とクレラー・ミュラー美術館がほぼ半々だが、後者の額縁は着色してない木の比較的シンプルなデザインに統一してあるのですぐわかる。

2010/09/30(木)(村田真)

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プロジェクトN 川見俊

会期:2010/07/28~2010/10/03

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

ありふれたスタイルの、しかしドギツイ色彩の住宅をフラットに描いている。ま、よくあるポップな絵(?)だが驚いたことに、これらの住宅は実在するのだそうだ。彼はこれを写真に撮り、住宅と同じように板に同じ色のペンキを塗っていくのだという。新作では、風景画の上に太い格子模様を重ねて描いている。具象と抽象のダブルイメージともいえるが、フェンス越しに見た風景というのが正解らしい。これはおもしろい。しかし、ギャラリーの窓に色とりどりのプラスチック容器を並べたインスタレーションはなんだろう。光を透過して美しいけど意味不明。

2010/09/29(水)(村田真)

アントワープ王立美術館コレクション展

会期:2010/07/28~2010/10/03

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

アントワープ王立美術館といえばなんてったって15~17世紀のフランドル絵画、なかんずくボッス、ブリューゲル、ルーベンス、ヴァン・ダイクあたりが有名だが、今回は19世紀末のアンソール、クノップフら象徴主義から、20世紀のマグリット、デルヴォーらシュルレアリスムあたりまでのベルギー近代絵画のみ。しかしかつての栄華は失われたとはいえ、また、パリをはじめとするモダニズム運動の中心地から離れているとはいえ、いやそれゆえにというべきか、油絵らしい油絵を堪能できた。

2010/09/29(水)(村田真)

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