artscapeレビュー

オノデラユキ 写真の迷宮へ

2010年08月15日号

会期:2010/07/27~2010/09/26

東京都写真美術館[東京都]

90年代の「古着のポートレート」から最新作まで、9シリーズ60点の展示。うち6シリーズはこれまでに見てきたが、初見のシリーズも含めて彼女の作品はいずれも、写真というものの常識的な思考・技術をウィットに富んだ方法でずらし、その異相から写真を問い直す試みといえる。なかでもぼくの好きなのは、群集の頭上に光の玉が写ってる「真珠のつくり方」というシリーズ。種明かしすれば、カメラの内部にビー玉を仕込んで撮ったものだが、ミクロな異物の光があたかも核爆発のように群集の頭上に降り注ぐ不穏な写真だ。ただこの展覧会では、十分に広いとはいえない1フロアに9シリーズを各数点ずつ押し込んでいるため、さまざまな試みを行なっていることは伝わるけれど、それぞれのシリーズについてどこまで深い理解が得られるか。

2010/07/29(木)(村田真)

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