artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
遠野物語・奇ッ怪 其ノ参
会期:2016/10/31~2016/11/20
世田谷パブリックシアター[東京都]
前川知大「遠野物語・奇ッ怪 其ノ参」@世田谷パブリックシアター。生きた言葉/方言によって語り継ぐ物語論としての演劇である。シンプルな立体フレームと舞台を中心に据えたセットを用いながら、「遠野物語」を題材とし、メタ的なストーリーの展開や、物語らしく細部の省略されたプロットを、いかにそのまま演劇化するかという試みが興味深い。
2016/10/31(月)(五十嵐太郎)
世界遺産 ラスコー展 クロマニョン人が残した洞窟壁画
会期:2016/11/01~2017/02/19
国立科学博物館[東京都]
「ラスコー展 クロマニョン人が残した洞窟壁画」@国立科学博物館の内覧会へ。考古学のモノもいろいろフランスから持ち込まれているが、うねうねとした洞窟の内部ものぞける1/10模型がデカいこと。そして、洞窟の一部を精密な1/1のレプリカで再現した空間が、建築的な視点から見たときのハイライトである。これが2万年前に人類が体験した闇の空間だと思うと感慨深い。写真ではわからない、激しい凹凸に壁画が描かれたこともよく理解できる。
2016/10/31(月)(五十嵐太郎)
GOOD DESIGN EXHIBITION 2016
会期:2016/10/28~2016/11/03
東京ミッドタウン[東京都]
グッドデザイン賞2016のベスト100に残った建築/住宅のセクションは、形態のデザインよりも社会的なプログラムの面白さで選ばれた作品が多いのだが、プロダクトの実物がずらりと並ぶ全体の展示から見ると、どうしてもインパクトが弱い。伝え方の工夫が必要かもしれないが。ミッドタウン・アトリウムユニットにて、15の審査報告会、ならびにこのジャンルのベスト100の受賞者プレゼンテーションに立ち会う。さすがに100に残ったプロジェクトは、どれも聞きごたえがあり、審査委員として選んでよかったと思える。特に多くの廃校があるなかで入念な校歌リサーチをして開催したウダーベ音楽祭はもっと上位に上げられたかもしれない。
2016/10/30(日)(五十嵐太郎)
フェスティバル/トーキョー16 パク・グニョン×南山芸術センター「哀れ、兵士」
会期:2016/10/27~2016/10/30
あうるすぽっと[東京都]
現代の韓国兵脱走事件、太平洋戦争で特攻を志願した朝鮮人、イラク戦争時に殺害された韓国の食品業者、2010年の哨戒艦沈没という4つの出来事が交差しながら、国家や政治に翻弄された死者を描く力作である。いずれも歯車となった兵士の悲しい運命をたどるが、唯一フィクションとして描かれた脱走のエピソードだけは、制度から逃がれる道かと思いきや、結局、自死に近いかたちでのみ解放されていたのが重い。
2016/10/30(日)(五十嵐太郎)
Under 35 Architects exhibition 2016 記念シンポジウムII
大阪駅中央北口前 うめきたシップホール[大阪府]
毎年秋の恒例になったU-35建築展@シップホール。今回は五十嵐淳が公募から選んでいるが、いつもとは違い、実施作のみではなく、プロジェクト段階の建築も入っているのが特徴だ。川嶋洋平は、道路に線を引く修士設計から、リニアな空間単位を組み合わせた集合住宅までを紹介する。小引寛也+石川典貴は、土木、公共への視野を打ち出しつつ、石巻の石の祈念堂を展示する。酒井亮憲はイギリスから輸入した椅子とその配置、床パターンから教会のあり方を考える。竹鼻良文は幾何学的な造形によって他分野との交流を積極的に展開しながら、同時に街づくりなどさまざまな活動に取り組む。前嶋章太郎は、ぶどう畑の原風景を抱きつつ、グリッドに基づく、ポリカーボネイトに囲まれた軽やかな野菜畑の倉庫や住宅を提示する。松本光索は、3カ月住み込みながらの民家リノベのギャラリーを1/1スケールで切り取りながら展示を行なう。高池葉子は準備できない状況となったらしく、残念ながら欠席だった。U-35の記念シンポジウムでは、前半はまず、伊東豊雄のレクチャーが行なわれ、2勝4敗のコンペ事例を紹介する。続いて出展者がプレゼンを行ない、後半は討議となった。伊東は建築が内向せず、社会に開き、接続することで次世代の建築を見せて欲しいとメッセージを送る。そして、伊東賞は、ヘンに力まない、さわやかな畑の倉庫の前嶋に贈られた。
写真:左=上から、川嶋洋平、小引寛也+石川典貴 右=上から、竹鼻良文、前嶋章太郎、松本光索
2016/10/29(土)(五十嵐太郎)