artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
BankARTスクール2016 高橋一平「横浜国立大学中央広場について」
BankART Studio NYK[神奈川県]
磯達雄と共同で開催しているBankARTスクール「横浜建築家列伝vol.3」にて、高橋一平をゲストに迎える。彼の経歴を振り返り、東北大→横浜国大→西沢立衛事務所で担当した分棟形式の《森山邸》や《十和田市現代美術館》、そして、独立後の《七ヶ浜保育園》や《Casa O》、《横浜国立大学中央広場》に至る一連の流れが語られた。これらを貫くのは、単体のオブジェとしての建築ではなく、つねに周囲との関係から群として考えることであり、現在、彼が興味を持って中国の各地でも観察している集落的な構成だった。
2016/10/27(木)(五十嵐太郎)
柳幸典 ワンダリング・ポジション
会期:2016/10/14~2016/12/25
BankART Studio NYK全館[神奈川県]
大空間をインスタレーションで思い切り使いきった力作が続く回顧展である。これだけまとめて、彼の作品群を見たのは初めてかもしれない。三分一博志が入って、現在の犬島の美術館ができる以前の1995年頃から柳が考えていた構想の全容もきちんと紹介されていた。そして、犬島の美術館の空間体験を再現したイカロス・セルの通路を抜けると、奥に巨大なゴジラの目が睨みをきかせている。
2016/10/27(木)(五十嵐太郎)
フェスティバル/トーキョー16 イデビアン・クルー「シカク」
会期:2016/10/21~2016/10/29
にしすがも創造舎[東京都]
映画『ドッグヴィル』風に床にラインを引くだけで、シェアハウスの間取りを設定していたが、ダンスと通常生活のスケール感が違うとはいえ、空間の分節があまり演出に生かされていないのがどうしても気になった。『ドッグヴィル』はじっと鑑賞しているうちに、俳優たちの演技から見えない壁の存在を感じるようになったが、ダンスの方は結局、壁も越境して動いていた。ダンスそのものは楽しいものだったが。
2016/10/24(月)(五十嵐太郎)
ダリ展
会期:2016/09/14~2016/12/12
国立新美術館 企画展示室1E[東京都]
実はあまり期待していなかったが、いわゆるダリ風の絵が完成する前の作品、すなわちいろいろな流行をコピーした挙句、25歳で突如開眼した経緯を確認できたのが収穫だった。また、映画(ブニュエル、ヒッチコック、ディズニー)、舞台美術、宝飾、挿絵などの仕事のほか、原爆が彼の作品に与えた影響など、多角的な側面からダリを紹介していた点もよかった。すぐに人気者となり、アートのジャンルを超えて、彼が商業的に大成功した意味を考えさせられる。
2016/10/24(月)(五十嵐太郎)
あいちトリエンナーレ2016 小杉武久「MUSIC EXPANDED #2」
会期:2016/10/23
愛知県芸術劇場小ホール[愛知県]
電波がつくる音、歩く、超低速の動作など、1960年代からの代表作を体験できる贅沢な機会だった。これは音楽を聴くというよりも、独特の音環境に包まれながら、音とは何かを考える場である。最後は波の映像を背景に「Catch-Wave」が演奏された。この公演がトリエンナーレの最後であり、旅をテーマとした芸術祭を締めくくる格好のフィナーレになっているように思われた。
2016/10/23(日)(五十嵐太郎)