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五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2016 青木涼子「秘密の閨(ねや)」Himitsu no neya

会期:2016/10/23

名古屋市青少年文化センター(アートピア)[愛知県]

鬼婆伝説の古典的な能と現代音楽の演奏を融合したパフォーマンスである。青木涼子は、建築家の青木茂のお嬢さんということでお会いしたことがあるのだが、以前にも名古屋で見た能×現代音楽がさらにパワーアップしている。そして、Noismの舞台も手がける田根剛によるミニマムで妖しげな舞台美術(上下するランプで正方形の結界をつくったり、出入り口のフレームを組み合わせてテーブルに変化する)、廣川玉枝がデザインした衣装が華を添えていた。

2016/10/23(日)(五十嵐太郎)

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あいちトリエンナーレ2016 Co.山田うん「いきのね」

会期:2016/10/22~2016/10/23

名古屋市芸術創造センター[愛知県]

黄色をテーマカラーとした今回のトリエンナーレらしく土を盛った舞台を使い、愛知県の花祭を触媒にして現代のダンスに昇華した作品である。冒頭の赤鬼と中盤の青鬼の鬼気迫る個人舞踏を挟んで、4×4の方陣をベースに躍動感溢れる群舞が展開する。ダンサーの動きに加えて、複雑な音楽のリズムと効果的な音響が、空間にさらなる生命感を与えていた。

2016/10/23(日)(五十嵐太郎)

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Assembridge NAGOYA 2016

会期:2016/09/22~2016/10/23

名古屋港~築地口エリア[愛知県]

名古屋港のエリアに向かい、あいちトリエンナーレ2016と同時開催のアッセンブリッジ・ナゴヤ「パノラマ庭園」をまわる。3月の展示に比べて、旧名古屋税関港寮や旧西本整骨院などの拠点がさらに増え、全体としていい感じになっていた。作品を設置していたおかげで、初めてポートビル展望室も登った。ヴォリュームが減った長者町よりも、まちなか展開ぽい。作品も港エリアを探索して着想したものが多く、地域密着型である。

写真:左=上から、名古屋港ポートビル、ヒスロム 右=上から、城戸保、玉山拓郎

2016/10/23(日)(五十嵐太郎)

クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス―さざめく亡霊たち

会期:2016/09/22~2016/12/25

東京都庭園美術館[東京都]

歴史ある建物に敬意を払ってということで、アールデコの本館はモノではなく、主に音による最小限の介入を行なう。一方、新館では、大きな目に睨まれる迷宮や、風で風鈴が鳴る映像を伴う大型のインスタレーションが設置される。ただし、彼の様式の手練に見えて、あまりぐっとこなかった。記憶の声のささやきといっても白けてしまうような、お昼の明るい時間に訪れたせいもあるかもしれない。

2016/10/21(金)(五十嵐太郎)

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《After 10 Years》対談

渋谷イメージフォーラム[東京都]

ホンマタカシによる新作の映像作品《After 10 years》をめぐって対談を行なう。2004年にスマトラ沖地震の津波被害を受けたジェフリー・バワ設計のホテルのちょうど10年後を撮影したものである。印象的なのは、いく度も繰り返されるスタッフによる掃除のシーンだ。掃除とは、すなわち建物の表面を触ることであり、音を通じて、鑑賞者にテクスチャーの感覚も伝わる。この行為はどこか宗教的な儀式にも見えるのだが、津波の日の直前がクリスマスのタイミングと重なっており、ホテルの外国人向けのアトラクションとして西洋のキリスト教の演出が混入する。なお、スタッフが被災時のエピソードを語る表情は意外なくらいに明るく、自分たちは仏教徒だからというセリフが出てくることも興味深い。

2016/10/21(金)(五十嵐太郎)