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《七ヶ浜町遠山保育所》《七ヶ浜町立七ヶ浜中学校》

2016年09月15日号

[宮城県]

七ヶ浜へ。高橋一平による《遠山保育所》は、三度目の訪問である。ルーズさを許容する原っぱみたいな中庭がいい味を出す。建物の高さを低く抑えているので、その分よけいに中庭が広く見える効果をもたらし、また空が大きく視界に入る。外壁のステンレスの鏡面は最初驚くが、周囲や自然を映し込み、やがてなじんでいく。続いて、乾久美子による《七ヶ浜中学校》を再訪すると、隣のグラウンドにあった仮設住宅群は消えていた。中庭をもつ単位を隅でつなぎ、連結部分に共有空間を置き、斜め方向に視線が伸びていく。透明で開放的な建築である。教室のモジュールで処理できないさまざまな用途のリトルスペースが内外にあちこち張り出す感覚は、必要に応じて増築した学校のようだ。

写真:上=《七ヶ浜町遠山保育所》 下=《七ヶ浜町立七ヶ浜中学校》

2016/08/22(月)(五十嵐太郎)

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