artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
全国小津安二郎ネットワーク総会 基調講演「建築からみる小津安二郎~開口部を通じて他の映画と比較する」
会期:2016/05/08
江東区古石場文化センター[東京都]
全国小津安二郎ネットワークの総会において、基調講演「建築からみる小津安二郎~開口部を通じて他の映画と比較する」を行なう。小津ファンが集まる場なので、3日間に10本近く立て続けに彼の映画を再見した。空間論に関する新しい気づきもあったが、改めて彼の作品群における人物の入れ替え可能性、欠損家族ゆえに女性が交換される物語の構造が強く感じられる。総会では、NHKの「美の壺」の取材が入り、また『お早よう』で子役だった音楽家・設楽幸嗣と当時助監督を務めた田中康義のトークも行なわれた。撮影時以来の対面なので、なんと約60年ぶり! らしい。貴重なエピソードやセットに使われたマグカップが披露された。ところで、会場の江東区古石場文化センターは、小津が江東区に生まれ育ったことから、彼や地域ゆかりの映画の常設展示がある。また下部に図書館や会議室を含む公共施設が入り、上部が都の賃貸集合住宅という官民の複合施設の走りだった。
写真:上=セットに使われたマグカップ 下=江東区古石場文化センター
2016/05/08(日)(五十嵐太郎)
首里城、八汐荘
[沖縄県]
船で那覇港に着き、久しぶりに首里城を訪れた。世界遺産の効果、あるいは外国人観光客の増加のせいか、以前よりも来場者だけでなく、復元されたエリアも増えた。そして周囲も赤瓦の建築が目立つようになり、首里城化している。続いて、国際通り近くの八汐荘へ。アトリエ門口がコンペに勝ち、設計したものである。このプロジェクトでは、元妹島事務所の細矢仁と組んでおり、彼がフナキサチコと手がけた沖縄小児保健センターのうねる曲線スラブとガラスを拡大したような建築だった。
写真:左=上から2つ《首里城》、《八汐荘》 右=上から、《首里城》、下2つ《八汐荘》
2016/05/03(火)(五十嵐太郎)
中正公園ほか
[台湾、基隆]
台湾の基隆へ。港町を見下ろす中正公園は、日本が支配していた時代の神社跡であり、入口の大きな鳥居は中華風のデザインに改造されていた。街中には近代建築もちらほら残る。仁愛市場は、筆者が20年前に台中の市場で目撃した混沌の記憶を蘇らせたが、21世紀にまだこうした場所が残っていることに驚かされた。なお、海辺はデッキの空間を工事中、駅では「かわいい基隆」の観光キャンペーンを展開しており、村上隆+奈良美智風の現代アートによって、ファサードやインテリアが覆われていた。
写真:左=上から、《中正公園》、元鳥居、仁愛市場 右=上から、《基隆駅》《尊済宮》《基隆市史蹟館》
2016/05/02(月)(五十嵐太郎)
チリ33人 希望の軌跡
実際に起きた炭鉱事故を題材とした映画『チリ33人 希望の軌跡』は、『白鯨との闘い』を想起させるチームによるサバイバル状況を描いた作品である。ただ、途中で地下の閉じ込められた空間に33人がまだ生存していることがわかってからは、『オデッセイ』と同様、物語は世界が結集する外部からのレスキュー大作戦に変わる。何もしようとしなかった会社に対し、家族が運動を起こし、メディアに火をつけ、政治の問題に変わり、世界の注目を集めたことによって、彼らの奇跡的な救出が可能になった経緯がよくわかる。
2016/05/01(日)(五十嵐太郎)
analog(DIY印刷加工スタジオ)
[宮城県]
アーティストのO JUNさんらと展覧会の企画打ち合わせを兼ねて、仙台のDIY印刷加工スタジオ「analog」を訪問した。せんだいスクール・オブ・デザインのスタジオで前衛的な装丁の雑誌『S-meme』を制作していたときにお世話になった菊地充洋が運営している。いろいろな機械が設置されており、さまざまな印刷と製本加工の技術を使えるスタジオである。
2016/04/25(月)(五十嵐太郎)