artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

光の巡回展「Nightscape 2050─未来の街・光・人」

会期:2016/05/14~2016/06/10

TEMPORARY CONTEMPORARY[東京都]

LPAの「Nightscape 2050」展は、ベルリン、シンガポール、香港と巡回し、各地で内容が変化・成長している。単なるLPAの作品紹介ではなく、三部構成の映像、子どもとのワークショップなどを通じて、世界の都市の光環境を考える展示である。そして最後のパートは、東京を舞台に、地下空間、隅田川、コンビニ、防災の照明の未来を独自に提案する。ちなみに、月島の会場テンポラリーコンテンポラリーは昔、筆者がよく通っていたところで、リノベーション・スタディーズの連続シンポジウムを企画し、2冊の本を刊行したほか、キリンアートプロジェクト2005で石上純也のテーブルを世界初披露した場所でもある(その設営のために、現場で徹夜するはめになったが)。

2016/05/13(金)(五十嵐太郎)

クリーピー 偽りの隣人

黒沢清監督の『クリーピー 偽りの隣人』は、当たり前の日常がずれて、いつの間にかそうでなくなる怖い映画である。主人公の職場として山本理顕が設計した埼玉県立大学が登場するが、部屋の向こうも見えるその透明な空間とは対照的に、プライベートな家屋の密室性が際立つ。親密な場所の奥底が反転していく感覚は、フロイトの提唱した「不気味なもの」と通底するものだろう。

2016/05/12(木)(五十嵐太郎)

窓学報告会 vol.2

会期:2016/05/11

YKK AP株式会社 窓研究所[東京都]

窓研究所の報告会に参加する。早稲田大学の中谷礼仁研究室による柱間装置論では、香川県の栗林公園の水辺にある掬月亭を題材とする約16分の映像を制作していた。光の状態が変化する1日の空間の表情の変化を丁寧にとらえた作品だが、とりわけ印象に残るのが、誰もいなくなったゾクゾクするような夜のシーンである。そして小津安二郎の映画は、実は柱、床、天井を撮影していなかったことを再認識させられた。

2016/05/11(水)(五十嵐太郎)

ホース・マネー

ペドロ・コスタ監督の映画『ホース・マネー』は、死の直前の混濁した記憶の迷宮めぐりのような展開である。そして闇を裂く光の効果が強烈だった。病める男のほとんど意味不明な語りから始まるが、物語が進むにつれて、その謎めいた言葉の意味は少しずつ解きほぐされる。が、その記憶は個人の体験で閉じず、ポルトガルの社会的な事件や移民共同体の集合的記憶とも接続していた。ドキュメンタリーとフィクションの境界線が揺らぐような作品である。

2016/05/10(火)(五十嵐太郎)

ローラン・ネイ氏 特別講義

会期:2016/05/09

東北大学青葉山キャンパス カタール・サイエンスキャンパスホール[宮城県]

東北大学の青葉山キャンパスのカタール・サイエンスキャンパスホールにて、ベルギーの構造デザイナーのローラン・ネイの講義が行なわれた。橋梁などの土木や建築のプロジェクトを合理的なアプローチで解く手つきの鮮やかなことに感心させられた。いわゆる明快に説明可能なデザインである。なお、長崎の出島、熊本の海辺、札幌の路面電車停留所など、日本でもプロジェクトを行ない、こちらはコミュニティ・デザイン的な取組みも報告された。

2016/05/09(月)(五十嵐太郎)