artscapeレビュー
フィンランディア・ホール
2014年10月15日号
[フィンランド、ヘルシンキ]
市内に戻り、《フィンランディア・ホール》(アルヴァ・アアルト/1971)の室内を見学できるガイドツアーに参加した。ガイドは褒めるだけではなく、施工や実用の問題点にも言及するが、全体としてはアアルト、すなわち建築家へのリスペクトを感じる内容だった。日本だと、少しでもミスがあると、だから建築家はダメみたいな風潮になりがちだが、文化的な背景が違う。
続いて、ティモ&トゥオモ・スオマライネンによる《テンペリアウキオ教会》(1969)へ。1930年代からコンペを繰り返し、ようやく1969年に完成したものである。細かいデザインがどうのこのではなく、とにかく岩盤をくり抜き、中央に浅い大きなドームを架ける空間操作によって、他にはない圧倒的にユニークな建築が実現した。
アアルトがヘルシンキで初めて依頼された仕事、《サヴォイ・レストラン》のインテリアを見るべく、そこで夕食をとる。かなりいいお値段のメニューだが、なるほど味もそれに見合うレベルだった。このレストランはビルの最上階に位置しており、屋上のテラス席を眺めると、船内にいるような雰囲気もある。1937年の内装を現在に残していることに感心させられた。
2014/09/22(月)(五十嵐太郎)