artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
アイサ・ホクソン「Death of the Pole Dancer」
会期:2015/02/08~2015/02/09
KAAT神奈川芸術劇場 小スタジオ[神奈川県]
TPAM/国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2015は、ほとんどスケジュールが合わず、アイサ・ホクソンの「Death of the Pole Dancer」のみ鑑賞することができた。約15分かけて、ポールをじっくりと組立て、垂直に立てる。そしてしばらく柱を憎むかのように激しく身体を叩きつけてから、上下回転しながらポール・ダンスを踊るのが、20分ほどのパフォーマンスだった。最後は尽き果てたように床に倒れ込み、そのままずっと動かなくなる。結局、立ち上がらないまま、終演となる終わり方が印象的だった。
2014/02/08(日)(五十嵐太郎)
陸にあがった海軍─連合艦隊司令部日吉地下壕からみた太平洋戦争─
会期:2015/01/31~2015/03/22
神奈川県立歴史博物館[神奈川県]
神奈川県立歴史博物館の「陸にあがった海軍」展は、興味深い視点だった。そもそも、谷口吉郎の建築がある慶應の日吉校舎と周辺に、戦争の末期に追いつめられた海軍の地下壕がつくられていたことを知らなかった。こういうレアなテーマをネタにした卒計を見たい。展示は、地下壕のアミダクジ型(!)のプランに力点を置いていなかったが、このプランを考察すると興味深い。大空間をつくれないから、通路がすべてオフィスになる。また、使い方が決まる前に掘り始めたために、中心性を設けず、さまざまに伸ばすことの可能性などを想定して、地上ではありえないアミダクジ型の平面になったのではないか。
2014/02/08(日)(五十嵐太郎)
天空からの招待状
台湾の空撮シーンだけで制作された映画『天空からの招待状』(監督:チー・ポーリン)を見る。製作総指揮は、ホウ・シャオシェン。険しい自然から農業、そして都市へ。空からしか認識できない驚くべきかたちが次々にあらわれるのが楽しい。映画館ならではの視覚の体験を味わえる。建築学生も、卒計の傾向と対策みたいな流行のデザイン以外の形を見てほしい。ただし、映画は途中から、環境問題に焦点をあてるようになり、語りがやたら説教ぽくなるのが残念だった。最後まで、映像の美だけでも十分にいけた作品だと思うのだが。
2014/02/08(日)(五十嵐太郎)
建築家と共同作業
世間を騒がせている作曲家のゴーストライター事件から思うこと。逆に建築家は映画監督と同じく集団制作が一般的であり、設計事務所はいわば建築家の集団でもある。以前、某エンタメ番組から丹下健三でクイズを作りたいと電話があり、しゃべっていて気づいたのは、すべての図面を丹下ひとりが描いていると誤解していたこと。公共施設を手がけるような建築家ではありえない。実際、建築の共同制作は、学生のときから始まっており、例えば、卒計の全図面と模型を本人だけでつくる人はほとんどいない。学生は多くのヘルプを使うし、模型が巧い下級生を求める。だから、卒計の講評会やせんだいデザインリーグなどで、目の前に重要な模型があっても、本人自らつくっているとは、審査委員を含め、誰も思わない。そもそも建築家が図面をひとりで描いたとしても、施工まで行うことはない。セルフビルドは例外中の例外である。図面の段階でも、年に住宅をひとつしかこなさない小さな事務所でないかぎり、所長の個人作業ではないことが一般的だ。が、素朴な天才神話を建築にあてはめると、丹下でもすべての図面を引いていると信じられてしまう。
2014/02/08(土)(五十嵐太郎)
バービー
大雪で外出を控え、DVDにて韓国映画の『バービー』を見る。父が障害をもつ貧しい家庭の姉妹が、養子縁組という名目でアメリカに連れられる物語だ。全編に漂う叙情的なテイストも韓国的だが、残酷すぎる予感を示すエンディングはハリウッドや日本ではできないだろう。しかも実際に姉妹だというキム・セロンとキム・アロンは、話題のテレビ・ドラマ『明日、ママがいない』の子役と比べて、レベルが違う演技力をもっている。
2014/02/08(土)(五十嵐太郎)