artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
作家ドラフト2014 鎌田友介「D Construction Atlas」展/高橋耕平「史と詩と私と」展
会期:2014/02/08~2014/03/09
京都芸術センター ギャラリー北・南[京都府]
京都芸術センターにて、青木淳が審査員を務めた公募展「作家ドラフト2014」を見る。窓枠などを使う鎌田友介(今回は京都の空襲リサーチを反映した作品)と廃校のドキュメント映像の高橋耕平。青木は多くの応募作から、実際にどう展示されるかをイメージして、二人のプランを選んだという。
写真:鎌田友介「D Construction Atlas」展
2014/03/08(土)(五十嵐太郎)
MONSTER Exhibition 2014
会期:2014/03/08~2014/03/12
渋谷ヒカリエ 8/COURT[東京都]
渋谷ヒカリエの8階へ。大学院生の論文から頭を切り換え、今度は庄司みゆきが企画した、さまざまな怪獣が集合するMONSTER展のオープニングにて審査を行なう。去年に続き二回目だが、全体の出品作のクオリティは上がっている。また作品のカタログも制作され、展覧会としても進化した。投票した宮崎宏康のひらがな FIGURESは、他の票も集めており、最優秀賞となった。デザインとしての怪獣はカッコよさが勝負だが、ここではアートとしての怪獣を重視した。すなわち、彼だけが怪獣的なかたちを一切模倣・反復せず、「がおーきゃー」という音を三次元化している。日本で独自に発達した怪獣文化を擬声語で表現しているのだ。1954年のゴジラ第一作(半世紀続く世界で希有な同シリーズの最高傑作)は日本の戦争体験が生み出した怪獣だが、MONSTER展も、実は東日本大震災を契機に仙台から企画がスタートしたものである。今後、どんな怪獣が生まれるのか楽しみだ。出品作はニューヨークでも展示される予定。筆者くらいの世代だと、最初の怪獣との遭遇はウルトラマンになる。これは結構重要な体験で、何かデザインされたものの形が面白いと最初に感じたのは、テレビで見る怪獣たちだった。いわば原体験である。ゴッホやピカソを美術書や展覧会で見るのではなく、むしろ怪獣の造形によって先に洗礼を受けている。ただ、宮崎宏康のひらがなFIGURESは、さんざん出尽くした怪獣の視覚イメージを繰り返すよりも、むしろ映画『大怪獣東京に現わる』に近い。これは徹底して怪獣そのものを描かず、最後には怪獣が神話化し、祭り化していく物語だった。
写真:上=会場の様子。下=宮崎宏康《ひらがな Figures『が』『ぉ』『─』・『き』『ゃ』『─』》
2014/03/07(金)(五十嵐太郎)
トウキョウ建築コレクション2014 全国修士論文展 公開審査
代官山ヒルサイドテラス、ヒルサイドプラザ[東京都]
トウキョウ建築コレクションの全国修士論文展では、パネルと実物、一部模型も展示されている。代官山のヒルサイドプラザの公開審査会に参加した。10名が発表し、質疑、そして全体の討議を行なう。予備審査では、学会や大学とは違う場なので、決まった枠組で精緻に調べたというよりも、論文を読んだ後、少し世界の見え方が変わるようなものを選ぶ。公開討論会を経ても、鬼頭貴大の『中世重層建築論』が突出しているという印象は変わらなかったため、五十嵐賞とした。日本建築史に垂直軸の意味論を導入しながら、古代の継承、大胆な仮説、二間論、具体的な設計論なども展開し、文章がちゃんとしており、読み物としても面白い。なにより自分の頭を使った論文である。
2014/03/07(金)(五十嵐太郎)
アメリカン・ホラー・ストーリー/アメリカン・ホラー・ストーリー アサイラム
テレビドラマのシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー」を見終える。興味深いのは、古い住宅で家族と混じり、ここで亡くなった死者たちが生者のように堂々と歩き回ること。複数の時間と人間が同じ空間に共存する、意外にありそうでなかった設定だ。以前、「非家族と暮らす住宅」というコンペの課題を設定したことがあるが、まさにそれを実現している。映画の『アザーズ』がこれに近かったけれども、生者と死者は交わらない。なにより、「アメリカン・ホラー・ストーリー」は哀しみだけでなく、ときに笑いさえ感じられる。この勢いで同じスタッフによる「アサイラム」のシリーズも見始めた。なるほど、イカレタ人間のオンパレードはすごいが、1作目の「アメリカン・ホラー・ストーリー」における家に縛られた魂の現代的な表現の方がすぐれている。
2014/03/06(木)(五十嵐太郎)
芳賀沼整、滑田崇志、滑田光、難波和彦(監修)《針生の箱》/手島浩之、武田幸司《サンカク、ヌケ、サンカク》(第7回 JIA東北住宅大賞2013)
[福島県、宮城県]
審査の三日目は、郡山から約2時間半をかけて、難波和彦の監修、芳賀沼整、滑田崇志、滑田光による《針生の箱》を見学する。山奥の雪に耐える自邸であり、まさに建築家の実験住宅だ。地産材を活用した縦ログ構法による木造プレハブで大きな空間をつくる。道路側は閉鎖的だが、4つの正方形を崩しながらつなぎ、庭側は気持ちのよい吹抜けと大きな開口を生む。今年はこれが東北住宅大賞に選ばれた。
仙台に移動し、手島浩之/武田幸司による《サンカク、ヌケ、サンカク》へ。郊外の新興住宅地において、斜めの切断線を敷地に挿入するシンプルな操作だ。が、これにより近接する両側の家に対して、2つの三角ヴォリュームでブロックしつつ、持ち上げた斜めのテラスが中庭として機能し、遠くの眺望を得る。巧みな配置と断面の微妙な操作は、さすが手島の持ち味だ。
写真:上=芳賀沼整、滑田崇志、滑田光、難波和彦(監修)《針生の箱》、下=手島浩之、武田幸司《サンカク、ヌケ、サンカク》
2014/03/03(月)(五十嵐太郎)