artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
丹下健三《戦没学徒記念若人の広場》
[兵庫県]
竣工:1967年
淡路島へ向かう。スケルトンのタマネギ小屋が点在する畑の風景がおもしろい。丹下健三による《戦没学徒記念若人の広場》を見る。モニュメント的な造形だが、同時に起伏のあるランドスケープとも複雑に関わり、いわゆる丹下的ではない空間の特徴もあわせもつ。経年変化によって建築の裸形がむきだしになっており、かえってすごい迫力をかもし出す。
2012/10/07(日)(五十嵐太郎)
建築新人戦 2012
大阪梅田スカイビル ファンファンプラザ5階展示場(タワーイースト5階)、空中庭園展望台ギャラリー[大阪府]
建築新人戦に審査員として参加した。現在、梅田スカイビルでの巨大化したイベントになっているが、京都工繊の教室を使った第1回の立ち上げの展示と審査を見ていたので、その急成長ぶりがよくわかる。応募総数も500を超え、あきらかに水準が上がっている。海外枠も今だからこそ、中国や韓国の学生が一緒に発表していることは意義深い。
今回、すぐれたセンスと人を真似ない独自性から、早稲田大学の田代晶子による小学校を推そうと最初から決めていたが、最後まで残って1位になった。筆者の投票はシンプルだ。完成度が高くても、楽しそうな空間でも、流行の何かに似てるものは基本的に選ばない。既存のモデルを下敷きにすれば、優秀なものはつくりやすいからだ。また自分の考えを補強する案よりも、むしろ自分が考えていなかったような視点をくれる案を好む。
2012/10/06(土)(五十嵐太郎)
田中一光とデザインの前後左右
会期:2012/09/21~2013/01/20
21_21 DESIGN SIGHT[東京都]
21_21はいつもあっさりとした展示が多いが、今回の「田中一光とデザインの前後左右」展は豊富な資料を揃えた濃密な内容だった。彼が具体美術と吉原治良の影響を受けていたことを知る。また、とくにブックデザインの紹介が楽しい。かたちがなくなる情報化時代を迎えたことで、改めて文字と写真が本というモノとしてパッケージ化されていたことを強く再認識した。会場構成とデザインは弟子の廣村正彰が担当している。
2012/10/04(水)(五十嵐太郎)
建築夜学校2012関連企画「21世紀の首都」展
会期:2012/10/02~2012/10/16
日本建築学会建築博物館[東京都]
建築学会の「21世紀の首都」展(建築博物館ギャラリー)を見る。立体や映像はほとんどなく、パネル中心の情報展示だった。磯崎新はやはりアイロニーである。東京計画2010がさらにSF化し、愚直なまでに都市計画を行なう八束はじめの展示に好感をもった。ただし、英文のみの展示が多く、せめてキャプションで日本語解説があるとよい。
2012/10/03(火)(五十嵐太郎)
始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語
会期:2012/10/01~2013/02/24
東京ステーションギャラリー[東京都]
東京ステーションギャラリーにて、現代美術展「始発電車を待ちながら」を見る。いずれも駅や鉄道に関わるアート作品だが、前半は一般受けがよさそうな作家、パラモデル、ミニチュア風に撮影した東京駅と東武ワールドスクエアの1/25の東京駅の模型写真を並べた本城直季、クワクボリョウタらが続く導入部とし、後半はヤマガミユキヒロなどを紹介する。あいちトリエンナーレ2013の公式デザイナーの廣村正彰も、既存の煉瓦壁を活用した人が通り過ぎる映像作品で参加している。
2012/10/03(火)(五十嵐太郎)