artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

辰野金吾《東京駅》

[東京都]

新しく/古くなった東京駅を見る。実に多くの一般の人が建築の写真を撮影していることに驚かされた。今までヴォリュームの組み合わせが悪いと思っていた部分は、三階やドームの形が復元されたことで、プロポーションが改善されている。またドームの内部も、想像以上に古典主義を崩したデザインになっていた。よく言えば、自由で「創造的」である。が、戦後ずっと存在していた姿も忘れてはいけない。また東京駅の上の容積率を売却することによって実現した今回の復原は、まわりの再開発も促進した。

2012/10/03(水)(五十嵐太郎)

音楽劇「ファンファーレ」 柴幸男(ままごと)×三浦康嗣(□□□)×白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)』

会期:2012/09/28~2012/10/14

シアタートラム[東京都]

あいちトリエンナーレ2013に参加する柴幸男のほか、□□□+白神ももこによる「ファンファーレ」を観劇した。物語の内容は単純だが、実験的な音楽劇である。ソラから生まれた「ファ」と「レ」の音しか歌えない主人公ファーレ。音と台詞と名前が連動して縛ることで、ふるまいに制限=ルールを与えている。音要素になった個。ある意味において、ばらばらでデタラメのキャラクターを、音楽のアンサンブルに仕立てあげる演劇だ。

2012/10/01(月)(五十嵐太郎)

Under 30 Architects exhibition 2012 30歳以下の若手建築家7組による建築の展覧会

会期:2012/09/07~2012/10/06

ODPギャラリー[大阪府]

大阪のU-30の展覧会へ。今年で3年目だが、学生の時から知っている出品者も多く、ゼロ年代に増えた卒計イベントとの連続性で見ると興味深い。通常こうした展覧会のシンポジウムでは、ヨイショやほめ言葉になりがちだが、U-30ではむしろ40代組の建築家からダメだしをされるのが特徴だろう。今回も五十嵐淳のディスり芸が炸裂した。また平田晃久からも手厳しい意見が出される。出品者はこれに耐え、またがんばって反論する。今回は特に中盤で米澤隆の中二病、新しい墓地のランドスケープを探求する関野らんらが、集中砲火を浴びた。U-30の打ち上げでも、批判された出品者との議論が続く。シンポジウムでは時間切れになってしまうが、この部分も公開されるとさらに面白いだろう。

2012/09/29(土)(五十嵐太郎)

悪魔のしるし「倒木図鑑」

会期:2012/09/27~2012/09/30

KAAT 神奈川芸術劇場[神奈川県]

建築学科出身の危口統之が主宰する悪魔のしるしの「倒木図鑑」を観劇した。これもKAATという場を生かした建築的な舞台装置(神社に見立てたKAAT、あるいはシーソーの構造によって3人の特別観客席とバランスをとる劇場。そして観客が去り、平行が崩れ、壊れる劇場)や物語の設定、また建物の用途の読み替えや結婚式/葬儀の形式性がおもしろい。一方、筆者にとっては、物語の推進力が弱かった。内容やエピソードが普遍化しづらい内輪の印象があり、やや混乱気味で、もうちょっと整理できたのではかと思う。

2012/09/27(木)(五十嵐太郎)

Chim↑Pom展

会期:2012/09/22~2012/10/14

パルコミュージアム[東京都]

渋谷のパルコにて、Chim↑Pom展を見る。海外で制作されたゴミや排ガスの作品もあったが、パルコならではの場所の特性をいかした展示がおもしろい。例えば、建物ファサードの巨大ロゴを外し、室内に「P」と「C」を移設したもの。そして店内のブティックを再現したような部屋があり、そこをハチャメチャにドローイングするものなどである。

2012/09/27(木)(五十嵐太郎)

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