artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

福島現代美術ビエンナーレ2012

会期:2012/08/11~2012/09/23

[福島県]

福島現代美術ビエンナーレを見る。閉鎖されているわけではない、稼働中の空港が会場で、不思議な雰囲気だった。限られた予算のなかで、あいちトリエンナーレ2013にも参加するヤノベケンジとオノ・ヨーコが主軸となって全体を成立させている。福島のテーマは「SORA」。著名なアーティストは少ないが、学生を含む、多くの作品がこれと共鳴していたことに共感を覚えた。ちなみに、福島は円谷英二の出身地であり、空港にウルトラマンや怪獣の常設展示がある。ヤノベケンジのサンチャイルドも、その隣に立っていた。

2012/09/19(水)(五十嵐太郎)

ハーメルンの笛吹き男

会期:2012/09/15~2012/09/16

神奈川県民ホール[神奈川県]

神奈川県民ホールにて、世界初演のオペラ「ハーメルンの笛吹き男」を見る。一柳彗の作曲。演出はあいちトリエンナーレ2013で抜擢した田尾下哲である。有名な伝承をもとに、笛吹きを媒介にして、嘘をつくことをめぐって、子どもと大人の関係から再解釈するメッセージ性の強い作品に仕上がっていた。巻物のようにどんどんスクロールする背景、空中を移動するネズミの群れ、そして客席も巻き込む空間演出などが、田尾下らしい。

2012/09/17(月)(五十嵐太郎)

《透明な地形》、《空の見える下階と街のような上階》ほか

会期:2012/09/16

[愛知県]

ゼミ合宿の2日目。まず午前は、高速を移動しながら、鵜飼哲矢による観覧車のある《刈谷ハイウェイオアシス》、韓亜由美がコンクリートの柱群にカラーリングを行なった《豊田ジャンクション》を見学し、吉村英孝らによる現代的な明るい空間として構想された《西光寺》、栗生明による傾斜地に建てられた《岡崎市美術博物館》のバックヤードを訪れた。午後は南川祐輝が設計した開放的な住宅、《透明な地形》を訪問し、子どもに熱く歓迎される。特に研究室の留学生、ドイツ人、ベルギー人、コロンビア人に強く反応していた。続いて、スタジオ・ヴェロシティによるかわいらしい住宅、《空の見える下階と街のような上階》では、精密に設計された空間に施主が気持ちよく住みこなしていた。豊田に向かい、ブラジル人が集っていた妹島和世の透明感あふれる《逢妻交流館》、槇文彦の端正な《トヨタ鞍ヶ池記念館》をまわる。そして名古屋に戻り、宮本佳明の住宅《bird house》を訪れた。傾斜する三角形の敷地で、家と離れのあいだをジグザグにスロープがつなぎ、地形ととりくむ彼らしい建築である。

写真:左上から、鵜飼哲矢《刈谷ハイウェイオアシス》、吉村靖孝+吉村真代+吉村英孝《西光寺本堂》、栗生明《岡崎市美術博物館》、南川祐樹建築設計事務所《透明な地形》、studio velocity《空の見える下階と街のような上階》、妹島和世《逢妻交流館》、槇文彦《トヨタ鞍ヶ池記念館》、宮本佳明《bird house》

2012/09/16(日)(五十嵐太郎)

博物館明治村、《プロソリサーチセンター》、《善光寺別院願王寺》

会期:2012/09/15

[愛知県]

建築学会の大会にあわせて、五十嵐研のゼミ旅行を実施した。初日は博物館明治村、細い木のフレームが集積した隈研吾のプロソリサーチセンター、そして山崎泰孝の善光寺別院願王寺をまわる。古いお寺の屋根をはぎとり、上部を切断し、鉄骨造の大屋根、あるいは45度傾いた巨大な直方体の内部にそれを鞘堂形式で包む。古い木材と鉄骨のフレームが同時存在し、新旧が激突するすさまじい空間だ。住職からも設計の経緯について興味深い話をうかがう。夜は宿で、恒例となっている研究室コンペを行なう。今回のテーマは五十嵐研のロゴであり、学生が自ら審査員となり、プレゼンと質疑応答を経て、伊藤幹が最優秀を勝ちとる。

2012/09/15(土)(五十嵐太郎)

2012年度日本建築学会大会(東海)建築デザイン発表会「復興拠点としての『みんなの家』」

会期:2012/09/13

名古屋大学[愛知県]

名古屋大学で開催された日本建築学会の建築デザインのセッション「復興拠点としての『みんなの家』」において、伊東豊雄を招待講評者に迎え、仮設のプロジェクトや村上晶子の設計した教会などの出品作をめぐって討議が行われた。五十嵐研からは、吉川彰布と村越怜が担当した南相馬の塔と壁画のある仮設集会所を出品した。最後は古谷誠章からの問題提起を受け、かたちを見せるデザインでよいか、それとも控えめな小屋にすべきかが議論となり、学生も交え、3.11以後のデザインの意味を改めて討議することになった。

2012/09/13(木)(五十嵐太郎)