artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「ARCHIZINES OSAKA/TOKYO」展
会期:2012/09/21~2012/09/23
京都造形芸術大学・東北芸術工科大学 外苑キャンパス[東京都]
仙台から東京に移動し、駆け込みで「ARCHIZINES OSAKA/TOKYO」展の最終日を訪れる。海外を巡回している建築雑誌展の日本バージョンだ。日本展はRADが企画し、元木大輔が会場構成を担当している。五十嵐の関係では、もう20年前になり、歴史化された筆者が大学院時代に手がけていた同人誌『エディフィカーレ』、東北大学のデザイン系の活動をまとめる年報『トンチク』、せんだいスクール・オブ・デザインの『S-meme』、五十嵐研の有志が刊行している『ねもは』などが展示される。今回、アートブックフェアを初めて訪れたのだが、想像以上に規模が大きい。いろいろな本や雑誌のブースが、会場となっている京都造形芸術大学の外苑キャンパスを埋め尽くす。知り合いにも多く会う。
2012/09/23(日)(五十嵐太郎)
伝統芸能伝承館《森舞台》ほか
[宮城県]
佐藤邸を出発し、まず建築学会賞となった《森舞台》を訪れる。隈研吾がルーバーを活用する現在のスタイルに移行しつつ、地方で作品を展開した時期の作品である。登米のエリアはみやぎの明治村と呼ばれるように、幾つかの近代建築が残る。旧尋常小学校は明治20年代ながら、外光を多く採り入れるべく透明性の高い空間をもち、きわめてモダニズム的だ。次に裁判所など、和洋折衷の室内をもつ水沢県庁記念館を見学し、仙台に戻る。
写真:上から、隈研吾《森舞台》、登米の旧尋常小学校
2012/09/23(日)(五十嵐太郎)
《こもれ日に降る丘 遊学館》、被災地訪問
[宮城県]
研究室のプチゼミ合宿を行なう。まず久米設計の《こもれ日の降る丘》へ。震災後、被災者を受け入れていたが、今はすっかり日常に戻っている。せんだいメディアテーク以降の開かれた透明な公共施設の典型例と言えるだろう。その後、矢本や東松島周辺の被災地を一年ぶりにまわる。打ち上げられた船はほぼ片付いていたが、半壊状態の住宅はけっこう残っている。夕方、研究室の秘書の実家、涌谷の佐藤邸へ。震災で壊れ、実際に建て替え予定の倉庫のコンペを行なう。学生にとっても、リアル施主を相手にプレゼンテーションする貴重な機会である。審査委員長のおばあちゃんが選んだのは、もっともシンプルな川崎亮の案。そのほか、家族のそれぞれから個人賞が贈られる。そのまま深夜まで飲んで宿泊する。
2012/09/22(土)(五十嵐太郎)
桐島、部活やめるってよ
映画『桐島、部活やめるってよ』を見る。緻密に構築されたスクールカーストが、トップに位置する桐島が姿をくらますことで、パズルのピースが崩れだし、関係性のネットワークに些細な変化がもたらされる。そして『ゾンビ』を伏線として、最後の屋上ですべてが交錯するさまを、多視点手法によって、丁寧に丁寧に描く。学校という閉ざされた空間は、まぎれもなく世界そのものである。そして映画部のメンバーたちの愛おしいこと!
2012/09/21(金)(五十嵐太郎)
ビッグパレットふくしま
[福島県]
久しぶりに北川原温のビッグパレットふくしまを訪れる。改めてすごいスケールと迫力だ。十数年前とはいえ、まだ日本にお金があったと思わせる。さまざまな造形と構造と空間の試みを行なう。今はなかなかできない。羨ましくもある時代の産物だ。ここの展示ホールが3.11後の避難所になっていた状態を見ていないが(おそらく、今回もっとも天井が高い避難所になったいたと思われる)、近くに住宅展示場もあって対極的な環境といえよう。
2012/09/20(木)(五十嵐太郎)