artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
コープ・ヒンメルブラウ《BMW Welt》ほか
[ドイツ ミュンヘン]
ドイツのインゴルシュタットにて、アウディのモビリティと未来都市に関するコンペの中間発表に出席した。石上純也のチームに関わっていたからである。ほかの参加者もサンパウロ、イスタンブール、ムンバイ、中国、アメリカと、今回は非ヨーロッパ圏の建築家が選ばれていた。それぞれの個性は出ていたが、おおむねOMA的な社会視線のため、石上純也だけが圧倒的に違う切り口になっている。これが終了し、飛行機に乗るまでの時間を使い、20年ぶりのミュンヘンで、コープ・ヒンメルブラウの《BMWwelt》とヘルツォーク&ド・ムーロンの《アリアンツ・アリーナ》を見学した。ロサンゼルスの学校は微妙だったが、BMWはダイナミックな力作である。空間もねじれて裏返り、まわり風景の切り取りも良い。アリアンツ・アリーナも、独特のシルエットからランドマークになっている。
写真:上=コープ・ヒンメルブラウ《BMW Welt》、ヘルツォーク&ド・ムーロンの《アリアンツ・アリーナ》
2012/05/16(水)(五十嵐太郎)
開館35周年記念シンポジウム「写真の誘惑─視線の行方」/開館35周年記念展「コレクションの誘惑」
国立国際美術館[大阪府]
会期:2012/04/21~2012/06/24、2012/5/13
国立国際美術館のシンポジウム「視線の行方」におけるセッション3「写真と建築」に参加し、近代建築のイメージがどのように写真のなかでつくられたか。あるいはカメラ・オブスキュラとしての建築など、二つのジャンルが出会うケースについての基調報告を行なう。その後、写真家の鈴木理策、建築家のヨコミゾマコトを交え、どこをどのように撮影するかをめぐっての建築家と写真家の駆け引き、CGの技術が発達したことによるデジタル時代の存在しないイメージの突出などが討議された。それにしても、開始前の館外の行列を見ると、写真の企画はとても多くの来場者が関心をもっているテーマであることがよくわかる。セッションの終了後、開館35周年記念展「コレクションの誘惑」を観る。ここのコレクションは、いまや現代美術史の貴重なアーカイブになっている。展示の第二部はシンポジウムと同様、写真の作品を特集したものだった。
2012/05/13(日)(五十嵐太郎)
サイモン・ロディア《ワッツ・タワー》
[アメリカ ロサンゼルス]
竣工:1954年
前回、UCLAの知人にロサンゼルスを案内してもらったとき、治安が悪いために、このエリアには行きたくないと拒否されたが、今回は念願のワッツ・タワーを見学することができた。建築の素養がない男が長い年月をかけてひとりでつくり上げたセルフビルドの塔の群は、白黒の写真でよく見ていたせいか、思っていた以上にカラフルである。そして彫刻的な外部だけだと思っていたが、足元にも装飾的な空間が存在していた。先がすぼまったプランを見ると、全体が船として構想されていたこともよくわかる。なお、現地はすでにだいぶ観光地化しており、日中はそれほど危険な雰囲気はなかった。
2012/05/06(日)(五十嵐太郎)
HERB RITTS L.A.STYLE
会期:2012/04/03~2012/08/26
Getty Center west Pavilion[アメリカ ロサンゼルス]
アート風の作品で知られている写真家、ハーブ・リッツの企画展を開催していた。芸術を商業とこう混ぜると成功できるという模範例のようなスタイル。が、こうしてまとめてみると、モデルが尋常じゃない。有名人だらけだし、彼らの身体もすごい。素材にも恵まれていたということか。しかし、本当にゲッティの底力を感じるのは企画展示よりも、常設である。中世、近世、近代の西洋美術のコレクションもそろえ、各時代の家具や装飾などは、展示室ごと、同時代の様式でインテリアのデザインをつくっている。新規購入では、建築家シンケルによるオペラ「魔笛」の舞台美術の図案を収録した画集、ピラネージ、ファイニンガーなどを展示していた。しかも、これらがすべて無料で観覧できる。
2012/05/05(土)(五十嵐太郎)
リチャード・マイヤー《ゲティ・センター美術館》
[アメリカ ロサンゼルス]
二度目のゲッティ・センターへ。やはりリチャード・マイヤーによる階段は空間の見せ場だし、安心感のあるモダンなスタイルは固定化されているとはいえ、群体でこれだけの規模をまとめあげ、なお美術館としても性能にあまり不具合がなさそうなのは、さすがだ。もっとも、展示が変化し続ける現代美術が含まれていないので、空間の仕様を決めやすいのかもしれないが。ディズニーランドがポストモダンのテーマパークなら、ゲッティ・センターはモダニズムのユートピア、あるいはアートのテーマパークだろう。同じゲッティの施設でも、ヴィラがローマを模範としているならば、センターは丘の上のアクロポリスでギリシアといえる。ちなみに、直島の安藤建築群は現代アートで、同じような展開をしているが、島に分散配置しているところが大きく違う。
2012/05/05(土)(五十嵐太郎)