artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

東洋大学工学部建築学科2011年度卒業設計展

会期:2012/03/24~2012/03/31

LIXIL:GINZA 7Fクリエイティブスペース[東京都]

東洋大学の卒業・修士設計の展覧会とあわせて開催された講評会に、末廣香織とともにゲストで参加した。選抜された作品を見ながら、全体として明快な特徴があることに気づく。個人的な風景やこだわりからスタートしつつも、ごりごりのパラメトリック・デザイン、フォルマリズムが展開しているのだ。ちなみに、五十嵐賞としては、学内受賞した人以外を対象とし、建物には手をつけず、内外の境界線となる塀のあり方のさまざまな可能性を示唆した塩原和記の「ガク都の牢」と、古典的な身体=建築論の系譜を踏まえつつ、アニメ絵少女の身体を建築化して秋葉原に挿入する嶋田裕紀の「美少女建築」を選んだ。

2012/03/24(土)(五十嵐太郎)

「鉄川与助の教会建築─五島列島を訪ねて─」展

会期:2012/03/08~2012/05/26

LIXILギャラリー[東京都]

LIXILギャラリーの「鉄川与助の教会建築」展は、近代日本におけるキリスト教受容とその変形として出現する教会の事例を紹介したものだ。以前、筆者が結婚式教会を論じていたときに、いわゆるウェディング・チャペルと鉄川の教会を比較したが、本物の教会かどうかで分けず、様式の変容としてこれらを検証すると、さらに興味深いだろう。

2012/03/24(土)(五十嵐太郎)

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アンヴァリッド(ホテル・デ・ザンヴァリッド)/軍事博物館

[フランス・パリ]

会場と近いので、久しぶりにアンヴァリッドに行く。ここは要塞都市のデザインで知られる技術者ヴォーバンの墓や彫像が置かれているが、フランス各地の要塞都市の模型群の展示は興味深い。美しい比例ではなく、合理主義と機能主義にもとづく幾何学的な造形は、マシーンとしての都市のようだ。軍事博物館は武器そのものが大量に展示されている。とくに近代以前の武器は、機能とシンボリズムが融合した「美術」にもなっており、ヘタな現代アートよりはるかに強度をもつ。多様な姿をもつオリジナルの数々は、『ベルセルク』の世界以上だ。しかし、近代になると、武器が機械に変貌していくこともよくわかる。

2012/03/21(水)(五十嵐太郎)

国際交流基金巡回展「3.11ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」

会期:2012/03/06~2012/03/31

パリ日本文化会館[フランス・パリ]

レクチャーを行なうために、パリの日本文化会館でも開催された「3.11ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展を訪れた。国際交流基金が企画した本展は、まったく同じものを2セット制作しており、それぞれが世界各地を巡回する予定である。日本文化会館では壁の面積に余裕があり、自立壁となるパネル用のイーゼルを使わず、1階のロビーと地下ホールのホワイエにまたがる展示になっていた。パリの来場者は、震災後に多くのプロジェクトが東北の各地で動き出していることに興味をもったようである。

2012/03/21(水)(五十嵐太郎)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2011年度秋学期成果発表会|記念講演 (講師:原研哉)

会期:2012/03/20

せんだいメディアテーク1Fオープンスクエア[宮城県]

せんだいメディアテークにて、せんだいスクール・オブ・デザインの学外発表会が行なわれた。ゲストに招いた原研哉のレクチャーでは、日本デザインの特性や自作の紹介を語った後、デザインの力を通じて、被災した東北地方はむしろ大きな変革ができるチャンスになりうることを、慎重に言葉を選びながら問いかけていた。筆者が担当するメディア軸では、藤村龍至をゲストに迎え、震災とショッピングを特集した雑誌『S-meme』3号を制作した。今回も製本部の協力を得て、1号、2号に引き続き、特殊装幀の実験を試みている。表紙が地図を兼ねた大きなサイズになっており、これを畳んで、雑誌自体を包む。つまり、ショッピングというテーマにあわせて、ラッピングする表紙になっている。

2012/03/20(火)(五十嵐太郎)