artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」関連レクチャー「建築から読み解く、イ・ブル作品」
会期:2012/04/13
森美術館[東京都]
建築以外のテーマだと、レクチャーの準備に通常よりもはるかに時間がかかって大変だった。改めて彼女の作品は、彫刻、身体、ジェンダー、建築、ユートピア、サブカルチャー、韓国の近現代史など、複数の要素のハイブリッドになっていることがよくわかる。例えば、丹下健三やI. M. ペイへのレファランスをもつ作品も展示されているが、相当深く勉強しないと読みこめないだろう。そうした意味で、見る人によってさまざまな回路がある。
2012/04/13(金)(五十嵐太郎)
311
会期:2012/03/03
ユーロスペースほか[東京都ほか]
被災地に出向いた森達也らの映画『311』を見る。完成度の高い作品とは言い難いが、そもそも3.11のドキュメンタリーで成功するとは何なのか? いや面白くてよいのか? という問いを与えることに大きな意味をもつ。これがいわゆる普通の被災地のドキュメントではなく、取材者側自体のドキュメントであることは、放射線量にびくびくしながら行動する、とくに前半の福島エリアのドタバタがよく示していた。逆に後半は普通のドキュメントに近づき過ぎていたかもしれない。
2012/04/08(日)(五十嵐太郎)
草間彌生 永遠の永遠の永遠
会期:2012/01/07~2012/04/08
国立国際美術館[大阪府]
最終日だけに、さすがの集客力を見せつけられた。現代美術でこれだけ多くの人を呼ぶことができるとは。今回はクサマトリックス展のようなアート的な空間を展示室内につくるよりも、手で描く作品の大量陳列によって作家の本領を発揮していた。上下も絵をぎっしりと並べる前近代的な方法で壁を埋めつくす。もはや前衛というより、その圧倒的にポジティブな存在感に笑うしかない。すごい。常設展では草間にあわせ、女性作家を中心に構成していた。
2012/04/08(日)(五十嵐太郎)
「にほんのいえ」展
会期:2012/03/24~2012/04/08
おなじみの藤村組に、U-30組が合流したような若手建築家のセレクションである。模型を整然と並べていくオーソドックスな住宅の展覧会だ。知らないプロジェクトは情報として勉強になった。ただし、実作と計画案が混ざっていること、展覧会タイトルとセレクションの関係がほとんど説明されていないことなどは気になった。
2012/04/08(日)(五十嵐太郎)
ユベール・ロベール─時間の庭
会期:2012/03/06~2012/05/20
国立西洋美術館[東京都]
まず日本において、ユベール・ロベール展が開催されたことが感慨深い。18世紀の廃墟趣味に感化されつつ、そこに当時の人々のふるまいを添え、自ら絵のような造園も行なった画家である。時間の想像力を付与した世界の表現は、まさに「時間の庭」というタイトルどおりの内容だろう。大友克洋やF. Schuitenの建築的な絵、あるいは廃墟の表現が好きな人にも、おすすめの内容である。
2012/04/06(金)(五十嵐太郎)