artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「ARCHITEKTONIKA 2」展
会期:2012/04/05~2013/01/13
Hamburger Bahnhof[ドイツ・ベルリン]
HAMBURGER BAHNHOFの「ARCHITEKTONIKA 2」展は、建築とアートを架構する作品をまとめて紹介する興味深い展覧会だった。実際、アーキグラムの未来都市計画からダン・グラハムの建築的なプロジェクトまで、さまざまな回路で2つのジャンルは結びつく。
写真:ダン・グラハムのパビリオン計画
2012/06/03(日)(五十嵐太郎)
トポグラフィー・オブ・テラー、ピーター・アイゼンマン《ホロコースト・メモリアル》
[ドイツ・ベルリン]
ベルリンへの訪問は2001年の9月11日の同時多発テロの日に入って以来、11年ぶりである。そのときはちょうどダニエル・リベスキンドの《ユダヤ博物館》が一般オープンした日だったが、今回はその後に完成したトポグラフィー・オブ・テラーやピーター・アイゼンマンの《ホロコースト・メモリアル》を訪れた。ベルリンでは、60年以上前の戦時下の記憶が、今なお現代建築として立ち上がる。《ホロコースト・メモリアル》は、慰霊空間であると同時に、遊びを誘発する場だった。晴れた日中は子どもたちが走ったり、かくれんぼができる。だが、地下に降りて展示を見ると、その空間デザインは地上の直方体が林立するランドスケープとシンクロし、忌まわしい記憶を想起させるものだった。
写真:上=トポグラフィー・オブ・テラー、下=ピーター・アイゼンマン《ホロコースト・メモリアル》
2012/06/03(日)(五十嵐太郎)
第7回ベルリン・ビエンナーレ
会期:2012/04/27~2012/06/01
KW Institute for Contemporary Art[ドイツ・ベルリン]
政治色を強く打ち出した過激な内容で話題になったのが、ベルリン・ビエンナーレである。メイン会場のエントランスには、ここはミュージアムではなく、活動の場なのだと書かれており、あちこちにアジテーションのチラシが貼られ、絶えず討議が行なわれていた。学生運動が盛んだった頃の大学のキャンパスのような雰囲気であり、個人的には駒場寮の空間が思い出される。次のビエンナーレのディレクターは動物にやらせろ、といった落書きで埋め尽された元教会の会場も強烈だった。巨大画面に投影された妊娠から出産までのジョアンナ・ラジコフスカによる映像作品《born in berlin》は、ただのプライベートな出産ビデオのようでもあり、これもアートか? という古典的な問いを発する。もっとも印象的だったのが、道路を黒い壁で遮断した作品だ。本当によく実現させたと感心したのだが、車の交通を止め、しかも街の階層の差も可視化している。その結果、この壁はまわりの憎悪を引き受け、落書きだらけになっていた。実際、この作品は広く物議をかもし、近くの商店の売上げも落ちたことから、会期の終了を待たずに撤去される。だが、与えられたハコの中で60年代の熱気を再現したような他の作品や活動に比べて、社会と直接的に向きあい、破壊されたという点において黒い壁の試みを評価したい。ベルリン・ビエンナーレのキュレーターであり、美術家のアルチュール・ジミエフスキーと面会する機会を得たが、アートはツールだと言い切っていた。
写真:上=落書きだらけの教会、下=道路を遮断した黒い壁
2012/06/02(土)(五十嵐太郎)
TRACK──西野達《ホテル ゲント》ほか
会期:2012/05/12~2012/09/16
シタデル公園周辺、ゲント大学周辺、旧市街中心部、トルハウス、マチャリハウス、ガスメーター・サイト[ベルギー・ゲント]
ゲントへ。駅を出て振り返ると、時計塔が仮設構築物で囲まれ、宿泊可能なホテルになっている。これはTRACKの最大の目玉になっている、西野達の作品だ。彼らしく、都市でもっとも目立つランドマークを巧みに使っている。TRACKは、1カ所だけを会場としたマニフェスト9とは対照的に、街なか展開のアートプロジェクトだ。ほかにも集合住宅のユニットを縮小コピーした家をツリーハウスにしたり、教会内部に作品を設置したり、歴史のある空き家を不気味な空間に変えるマーク・マンダースのインスタレーションなど、さまざまな作品がある。現在は公園内の駅舎を再利用したS.M.A.Kが拠点になっているが、箱が先にあって街なか展開ではなく、むしろ順番が逆だという。
写真:上・中=西野達《ホテル ゲント》、下=ベンジャミン・ヴァードンクによるツリーハウス
2012/06/01(金)(五十嵐太郎)
Mind the System, Find the Gap
会期:2012/06/02~2012/09/30
Z33[ベルギー ハッセルト]
ベルギーのハッセルトでは、Z33というアート・スペースの「Mind the System, Find the Gap」展のプレビュー・パーティへ。こちらはスキマをテーマに、美術や建築の作品をいろいろと紹介していた。建物の見学は日が暮れると基本的に終わるが、アートの鑑賞は夜になっても続く。世界を飛びまわり、各地のオープニングを訪れるキュレータの仕事は相当にタフだ。
2012/05/31(木)(五十嵐太郎)