artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

CIRCULER: VILLE, MOBILITÉ ET ARCHITECTURE(循環する 都市、移動、建築)

会期:2012/04/04~2012/08/26

建築・文化財博物館[フランス パリ]

シャイヨー宮の建築博物館へ。今回は収蔵の時期を注意深く見ていくと、壁、扉、彫刻など、中世の教会の部分移築は19世紀から行なわれており、建築模型はパリ万博時の制作が多い。また壁画の模写は、第二次大戦の頃にも行なわれている。言うまでもなく、一夜にしてそろったコレクションではない。過去を保存していくことへの情熱が脈々と続いているのだ。企画展は交通の変化と建築・都市の関係に焦点をあて、こちらも興味深い。

2012/05/28(月)(五十嵐太郎)

ラ・トリエンナーレ(La Triennale: Intense proximité)

会期:2012/04/20~2012/08/26

パレ・ド・トーキョー[フランス パリ]

あいちトリエンナーレ2013の業務として、約2週間、キュレータ・チームとともに、ヨーロッパ各地の作家を訪問したり、国際展をめぐることになった。パリでは、パレ・ド・トーキョーのパリ・トリエンナーレ2012を見る。さらに改造し、面積が3倍くらいに増えたために、新作は少ないものの、膨大な作品数だった。もともとラカトン&ヴァッサルがデザインしたパリで一番好きなアート・スペースだったが、驚くべきことに、もっとカッコよくなっている。下にまだこれほどの場所が隠されていたとは。当初、モダニズムへの反動としてつくられたデザインだが、無駄に空間が大きいことや天井の高さなどは結果的に現代美術が要求するスペックにとても合う。パレ・ド・トーキョーは、かつての重厚な壁をとり払い、近代的な構造の軽やかさがむきだしになった。しかし、未完成的、あるいは廃墟的なリノベーションの空間は、日本ではなかなかできないだろう。

2012/05/28(月)(五十嵐太郎)

「クラウド・シティ」トマス・サラセーノ展/A Night Is A Dream Come True: Anime Expressionist Painting 展/鈴木伸吾「浮島」写真展 ほか

[東京都]

銀座と六本木エリアにて、ギャラリー、美術館をめぐり、14の展覧会を見る。メゾン・エルメスのトマス・サラセーノによる、浮遊感覚あふれるクラウド・シティ展では、建築の内部に、インテリアをもつふわふわとした皮膜建築が出現した。あまり目に見えない線に引っかかって壊す人も、今後絶対に出るに違いない。村上隆がキュレーションした「悪夢のどりかむ」展は、いわゆるキャラが強い、アニメ的な絵画が全開だが、デジタル的な表現を駆使するというよりも、手でキャンバスに描くというアナログ的な感覚への回帰を強く打ち出している。また六本木のzen photo Galleryにおける鈴木伸吾の「浮島」展では、トーマス・デマンド風の模型制作→撮影だが、不穏な場所ではなく、日常的な風景のゆらぎを感じさせるものだった。それにしても、ピラミデの建物は、オープンスペースの中庭が気持ちよく、記号的なポストモダンに回収されず、割とよい歳のとり方をしている。

2012/05/26(土)(五十嵐太郎)

SSD 2012年度春学期 Interactiveレクチャー「境界線上のインテリアデザイン」♯1|SSDハウスレクチャー「倉俣史朗論」鈴木紀慶

会期:2012/05/24

阿部仁史アトリエ[宮城県]

せんだいスクールオブデザインにて、編集者の鈴木紀慶さんを招き、彼の手がけた2冊の倉俣史朗本をベースにレクチャーをしていただく。高松次郎や横尾忠則など、60年代におけるアートとのコラボレーションを行なったインテリア、ミニマリズム的な展開、カラフルでセンスあふれるポストモダン、後の建築界の動向に大きな影響を与えたであろう軽さと透明感への志向など、経験に頼らず、彼が新境地を開拓した軌跡/奇蹟を追う。

2012/05/24(木)(五十嵐太郎)

2012・仙台アンデパンダン展/せんだい春のアート散歩/picnica hentecos. 3 今回は4人にお願いしました展

[宮城県]

2012・仙台アンデパンダン展がスタートした。むろん、東京や名古屋などに比べると、現代美術のギャラリーは決して多くはないが、こうしたかたちで市内6つのアートスペースが同時連携するのは初めてらしい。主に宮城県、ときどき関東圏の作家が入っている。大学近くのギャラリー・ターンアラウンドとart room Enomaに立ち寄る。前者はカフェも併設し、所狭しと作品が並ぶ。また、この日は「せんだい春のアート散歩」の期間中でもあった。仙台の美術カフェ、PICNICAの展示法が興味深い。同一作家とは思えない画風がばらばらの小作品がランダムに配置されている。「picnicahentecos.3 今回は4人にお願いしました」展では、実は麻生日出貴、伊東千紘、芳賀一彰、本田崇の絵をシャッフルして混ぜていたのである。しかし、本当にひとりだったら、すごいかもしれない。

写真:ターンアラウンド

2012/05/22(火)(五十嵐太郎)