artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「超群島 HYPER ARCHIPELAGO─3.11以後、アーキテクト/アーティストたちは世界をどう見るか?」展
会期:2012/03/11~2012/04/16
EYE OF GYRE[東京都]
GYREの超群島展へ。藤村龍至によるメタ・メッセージはきわめて明快であり、マニフェスト型の展覧会としては成功だが、全体として見ると、個別の作品がモノとして弱い。これは彼の展示でいつも感じられることなのだが、本や情報では表現できない、展覧会ならではのマジックを求めると、ちょっと肩すかしをくらう。対照的に、近くで開催中のルイ・ヴィトン表参道の「コズミック・トラベラーズ」展では、渡辺豪の《“one landscape,” a journey》をはじめとして、作品は緻密で強度をもち、いまここでしか体験できない展示の魔術が出現していた。また超群島展では、建築とアートの作品を混ぜたのは今回のウリだが、短期間に展覧会が続くために、藤村組が可視化され、堂島リバービエンナーレ2011での展示や過去のラインナップとの重なりが多いのも気になる。
2012/04/05(木)(五十嵐太郎)
栗原健太郎+岩月美穂 studio velocity展「fluctuationーゆらぎ」
会期:2012/03/31~2012/04/08
masayoshi suzuki garllery[愛知県]
masayoshi suzuki galleryにてstudio velocityの「 fluctuation (ゆらぎ)」展のオープニング・トークに参加した。1階はフィルムによるゆらぐ建築スケールの構造体が、さまざまなにまわりの環境を映しだす。地下は床の傷をランドスケープに見立てた超微細な模型である。石上純也事務所出身の若手ユニットらしく、建築とアートを架橋する作品であり、とてもフラジャイルな感覚をもつ。現在、書類審査の結果、今年のヴェネチアビエンナーレ国際建築展に参加する可能性があり、国際展のデビューも期待されている。
2012/03/31(土)(五十嵐太郎)
南川祐樹建築設計事務所《透明な地形》
[愛知県]
竣工:2007年11月
岡崎にて、南川祐輝が設計した住宅「透明な地形」を見学した。9分割された矩形の屋外作品である佐久島のおひるねハウスを見て依頼があったらしく、その空間コンセプトを住宅に展開したものである。線路沿いで、くの字型に屈曲するヴォリュームに4つのキューブが貫通するような形式をもつ。1つがくり抜かれたテラス、2つが個室、残りの1つが浴室である。地形を反映した大階段や高い天井など、空間を使う楽しさが感じられる家だった。
2012/03/31(土)(五十嵐太郎)
国際芸術祭 あいちトリエンナーレ2013 記者発表
会期:2012/03/29
朝からあいちトリエンナーレ2013の有識者懇談会、昼から知事が座長となって運営会議、そして記者会見という長い一日だった。今回の発表では、少し展示の枠組みが見えてきたこともあり、プレスから具体的な質問が多く寄せられた。建築に絡む開催概要のポイントは、以下のとおり。名古屋の美術館や長者町以外に岡崎も会場になったこと。キュレータチーム(リバプール・ビエンナーレの監督を長くつとめたルイス・ビッグス、住友文彦、飯田志保子、拝戸雅彦ほか)やパフォーミングアーツのプロデューサー陣(全体統括の小崎哲哉ほか)が決定したこと。現代美術の作家では、前回発表された石上純也らの四人に加え、新しく青木淳、打開連合設計事務所(台湾)、建築的な作品を手がけるリチャード・ウィルソン(イギリス)やウィット・ピムカンチャナポン(タイ)、ヤノベケンジなど、8組が紹介された。オペラの演出家は、東京大学の建築学科出身の若手、田尾下哲がつとめ、『蝶々夫人』を上演する。また建物公開を行なうオープンアーキテクチャー、建築マップの作成、各地にアートを届けるトリエンナーレ・トラックなどの新しい試みも行なう。
2012/03/29(木)(五十嵐太郎)
「つくるが生きること」東日本大震災復興支援プロジェクト展
会期:2012/03/11~2012/03/25
3331 Arts Chiyoda 1Fメインギャラリー[東京都]
3331アーツ千代田の「つくることが生きること」展の最終日、トークイベントのために訪れた。これは東日本大震災復興支援プロジェクト展であり、陶器浩一研究室+高橋工業が気仙沼に建設した竹による集会所や椿昇のクリーンエネルギーを提案する作品など、約70組の建築家、アーティスト、デザイナー、企業、NPOの活動を紹介する。建築に関しては、「311ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展とかぶる事例も多いが、むしろ建築以外のプロジェクトが混ざっていることが特徴だろう。危機的な状況に対して、多様な主体がそれぞれの特性を生かしたユニークなプロジェクトを展開したことがうかがえる。
2012/03/25(日)(五十嵐太郎)