artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

「望郷─TOKIORE(I)MIX」山口晃 展

会期:2012/02/11~2012/05/13

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

山口晃が、醜い景観の代表としてしばしば槍玉に挙げられる、電柱に注目し、それを和風のデザイン=「日本的なもの」に変えた絵画やインスタレーションを以前から発表していたことに興味をもっていたが、今回の展示ではなんと和風電柱が大きなサイズで立体化されている。メゾンエルメスの展示室に立つ柱を電柱に見立て、これに手を加えることで、インスタレーションに変えているのだ。こうした建築的なアイデアは実に愉快である。

2012/02/26(日)(五十嵐太郎)

AKB48ドキュメンタリー第2弾『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on少女たちは傷つきながら、夢を見る』

会期:2012/01/27

全国東宝系

AKB48の第一弾は映画として全然ダメだと思ったが、TBSラジオにおけるライムスター宇多丸のレビューを聴いて、二弾を劇場で見る気になった。これはすさまじい作品である。震災とアイドルの絶頂期が重なる偶然も作用し、奇蹟が起きている。大槌町、宮古市、陸前高田市、気仙沼市、多賀城市など、映画で紹介された彼女らがまわった被災地は、すべて筆者も実際に歩いていたので、(彼女たちの目に映っていたであろう)画面の外側の風景が鮮やかに思い出される。これはまぎれもなく一種の震災をめぐるドキュメンタリー映画でもあり(彼女たちの苦労や、アイドルの存在意義が問われる危機ともかぶってくる)、おそらく、被災の程度で見方が変わるだろう。総選挙、ライブ、ジャンケン大会など、所詮ショーはつくりもののコップの中の嵐なのだが、過度な負荷がかかることで、アイドルの生身の人間としてのリアルな身体性が残酷なまでにあらわになってしまう瞬間がある。映画で幾度も挟み込まれる、自由学園明日館で撮影された綺麗なインタビュー映像(逆に、第一弾はこればっかりだった)と対比的なのも興味深い。それにしても、エンターテイメントのために、こんなに負荷をかけて大丈夫なのか? と思わざるをえない。

2012/02/26(日)(五十嵐太郎)

アーツ・チャレンジ2012

会期:2012/02/14~2012/02/26

愛知芸術文化センター[愛知県]

続いて、愛知芸文センターにて、アーツチャレンジ2012を見る。地下2階に大量の安全ピンを並べた土田泰子、書籍の頁を折り、読み取ったイメージを造形化する益永梢子、名古屋の街でのささやかな出来事のニュースを配信するタニシK、屋外階段踊り場の空間に音を鳴らす彫刻を置く嶋田晃士など、さまざまな作品を楽しめる。すべてがホワイトキューブの外側に展示されているので、やはり、個人的には街や美術館の場所をうまく使うタイプの作品が興味深い。

写真:上から、土田泰子、益永梢子、タニシK、嶋田晃士

2012/02/25(土)(五十嵐太郎)

トリエンナーレスクール 世界の国際展シリーズ1「ヴェネチア・ビエンナーレでの出来事」

会期:2012/02/25

愛知芸術文化センター12F アートスペース[愛知県]

トリエンナーレスクールとは、あいちトリエンナーレ2013に向けて、いろいろな勉強会を行なう企画である。五十嵐が進行役となり、ヴェネチアビエンナーレ国際美術展2011の日本館コミッショナーを担当した国立国際美術館の学芸員、植松由佳を招き、「ヴェネチア・ビエンナーレでの出来事」について語ってもらう。このときの出品作家は、束芋である。筆者は国際交流基金の国際展事業委員会のメンバーとして、コミッショナー選定のコンペに関わっており、束芋のプランが使いにくい日本館の内部空間をうまく使いこなせるか気になっていたが、中心に井戸に見立てた場所をつくり、見事に活用していた。トークでは、途中からアートとビエンナーレをめぐる資金やお金などの話題が中心になり、あまり表にでない話も聞くことができた。

2012/02/25(土)(五十嵐太郎)

ぺちゃくちゃないと2012 クリエイティブ・デザインシティなごや 20images×20seconds

会期:2012/02/23

青少年文化センター アートピアホール[愛知県]

ぺちゃくちゃないと2012クリエイティブ・デザインシティなごやに参加した。遅れて到着したこともあり、トリだった。ぺちゃくちゃナイトは、海外で一度体験していたが、国内では初めて。会場が変わると、全然雰囲気も変わる。だが、20枚のスライドを20秒ずつ映しながらしゃべるという形式は同じ。明快なシステムだからこそ、今や世界各地で開催されているのだが、同時に場所の差異も浮き彫りになるのが興味深い。

2012/02/23(木)(五十嵐太郎)