artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

磯崎新「過程│PROCESS」展

会期:2011/09/09~2011/11/12

MISA SHIN GALLERY[東京都]

幸い、会期が延長されたおかげで、磯崎新「過程」展を見ることができた。1960年代に発表した孵化過程のインスタレーション、ドローイングとテキストの展示である。針金ぐるぐる、石膏ぶっかけの再制作は、昨年の「海市2.0」など、最近各地で続いたが、ドローイングとセットになった宣言文、改めてカッコいい。

2011/11/05(土)(五十嵐太郎)

POST 3.11 これからデザインにできること展

会期:2011/10/26~2011/11/06

AXISギャラリー[東京都]

建築、プロダクト、教育など、タイトル通りの内容だが、あいにく会場におけるトークの最中で、半分くらいの展示はちゃんと見ることができなかった。そのせいもあるかもしれないが、多くの事例からなぜこれらを選んだのかというキュレーションの意図が読みにくい。もっとも、阪神淡路大震災の後、建築やアートがどのような対応をしたかについての、詳細かつ長期的なクロニクルのデータ展示は興味深いものだった。東日本大震災についても、こうした観測が必要だろう。

2011/11/05(土)(五十嵐太郎)

311 失われた街 展

会期:2011/11/02~2011/12/24

TOTOギャラリー・間[東京都]

ギャラリー間の「失われた街」展。かつての被災地である神戸の大学に勤める槻橋修から震災直後に提唱された、3.11以前の街の様子を表わした白模型群が並ぶ。ほとんどのエリアを踏破したので、自ら体験した被災後の風景と比べながら見る。会場は大勢の学生でにぎわっていたが、逆に現地を訪れていないとどう見えるのだろうか。模型は区切られるので、複雑な地形の起伏は思ったほどには伝わらない。やはり、「街」を表現しているスケール感だった。白模型は地元とのワークショップの際、重要なツールになるだろう。

2011/11/05(土)(五十嵐太郎)

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『ニーチェの馬』

[埼玉県]

タル・ベーラ監督の最後とされる映画『ニーチェの馬』を見る。おそろしく、カット数が少ない。ひきのばされたミニマル・ミュージックのごとく、極小にまで削ぎおとされた要素。農夫と娘と馬と訪問者、わずかな登場人物。クライマックスはない。たえず強風が吹きすさぶ谷間の家の窓から木が見える。そうしたカスパー・ダヴィット・フリードリヒの絵のような、風景と構図だけで映画が成立している。ロケハンでふさわしい場所を探し、そこにセットとして家をまるごと一棟建設したという。しかし、単調な反復がほころび、やがて世界が壊れていく。いや、世界はすでに終わっていたのかもしれない。創世記を反転したように、物語が終焉に向かっていく。

2011/11/04(金)(五十嵐太郎)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2011年度秋学期開講式記念講演(名和晃平)

会期:2011/11/03

せんだいメディアテーク 1Fオープンスクエア[宮城県]

開講式の名和晃平によるレクチャーでは、男性作家として最年少での個展となる東京都現代美術館の展示と、京都のSANDWICHにおけるクリエイターの横断的な制作活動のプラットフォームが紹介された。前者の報告からは、彼が情報化の時代における先端的な造形を探索していることがよくわかる。また名和は学生時代から後者の活動につながるイベントを企画していたという。しかし、人から恵まれた環境をあらかじめ与えられるのではなく、自発的だからこそ、個性的かつ創造的な場を生むパワーに改めて感心させられた。

2011/11/03(木)(五十嵐太郎)