artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
アーツ前橋開館記念展 カゼイロハナ 未来への対話
会期:2013/10/26~2014/01/26
アーツ前橋[群馬県]
開館記念展「カゼイロノハナ」は、地元の作家とその歴史を紹介しつつ、現代の工芸や書道も組み込み、前橋とゆかりのある文学者、音楽家、科学者らの仕事をアートに接続しながら、地域の豊かな資源を掘り起こす。綿密なリサーチをもとにした横断的なキュレーションである。カタログの前橋美術史年表も力作だ。
地域アートプロジェクトは、銭湯での伊藤存と幸田千依、ビルの一階を使う西尾美也、角地のアースケイプなど、まちなかの空きスペースを活用し、アーツ前橋の活動と連携している。またアーツ桑町や、八木隆行によるya-ginsのギャラリーなど、自主的に発生したアートスペースも出現していた。アーツ前橋の向いも、百貨店をリノベーションした前橋元気プラザ、アーケードに面しては、石田敏明さんによる学生向け居住施設が着工するなど、中心部でいろいろな動きがある。20年前に開館した前橋文学館では、萩原朔太郎推しで常設展を構成しているが、今度は、アートが前橋に新しい風を起そうとしている。
写真:上=西尾美也、下=ya-gins
2011/11/28(木)(五十嵐太郎)
南相馬市プロジェクト「塔と壁画のある仮設集会所」ワークショップ
会期:2011/11/27~2011/11/28
南相馬市[福島県]
南相馬市の仮設住宅地にて、ワークショップとゼミ合宿を行なった。彦坂尚嘉による巨大壁画のある集会所の基本設計を、東北大の五十嵐研が担当したが、引き続き、学生らが大工の協力を得て、ベンチを制作した。2つのタイプがあり、ひとつは「南相馬市民のうた」のサビの楽譜を取り込んだもの、もうひとつは6個で1ユニットとなり、台形のピースをつなぐと、六角形になるタイプである。また塔を建てるプロジェクトも動きだし、その部材の運び込みと塗装を行なった。12月中に塔も完成する予定である。
2011/11/28(月)(五十嵐太郎)
土木デザイン設計競技「景観開花。8」公開最終審査会
会期:2011/11/26
街路をテーマにした「景観開花。」の公開最終審査会が行なわれた。一次審査のときからこれが一位になるのかなと思っていた松本亜味らの「ほねまち─津波に強い平野のまち─」がやはり最優秀賞だった。魚の骨型に土を盛って、仙台の平野部に緊急時の避難路を設けるというもの。2位はすり鉢の細やかな地形を重視した早稲田チームである。敢闘賞には、林匡宏の神話的な渋谷川の方舟の提案が選ばれた。今回、最後は無理がない自然体のプロジェクトに投票した。
2011/11/26(土)(五十嵐太郎)
『死なない子供、荒川修作』DVD発売記念 五十嵐太郎×池上高志×渋谷慶一郎×山岡信貴 トークショー
会期:2011/11/23
カルチャーサロン青山にて、山岡信貴監督とトークショーを行なう。映画では、一番見たかった、ここで生活しているのはどんな人たちかが紹介される。荒川へのビデオレターのような作品だった。そして人と環境/建築の相互作用とはどういうことか、また死なない、とはどういうことなのかなどの問いを考えていく。筆者が体験したアンチテーマパークとしての《養老天命反転地》、名古屋の《志段味循環型モデル住宅》、二度訪れた《三鷹天命反転住宅》、あるいは建築とアートの関係を語る。山岡監督からは、荒川がわざわざ住宅展示場の正面を敷地に選んだ興味深いエピソードをうかがう。
2011/11/23(水)(五十嵐太郎)
RE; BUILD 生き還る建物と心
会期:2011/11/23
シネマート六本木[東京都]
バンタンデザイン研究所の学生が、3.11以降を見据えた特集上映「RE; BUILD 生き還る建物と心」を企画した。ラインナップは以下の通り。『軍艦島1975 ─模型の国─』は、廃棄された直後の風景を撮影したもの。3.11以降、人が入らなくなったフクシマを思わせるが、その一方で生い茂る植物や動物の生命力もフィルムに写り込む。実際、被災地でも緑の力は強いのだが。『維新派 蜃気楼劇場』は、汐留貨物線跡に仮設の街舞台をつくり解体するまでのドキュメントである。今思うと、当時はバブル期だけに、実際の都市風景に挿入されながら、蜃気楼のように現われて、消えていく、スクラップ・アンド・ビルドの虚構の街は別の意味を帯びてくる。『ジョルジュ・ルース 廃墟から光へ』は、だまし絵的な作風のルースが、阪神淡路大震災で廃墟となったビルや倉庫に、作品を制作するドキュメント。登場する人たちが90年代の顔とファッションで懐かしい。『死なない子供、荒川修作』は、《三鷹天命反転住宅》に暮らす山岡信貴監督が撮影したドキュメントである。バンタンの学生はまずこの映画を上映したいという思いから、今回の企画を立ち上げたのだという。
2011/11/23(水)(五十嵐太郎)