artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

アーヴィング・ペンと三宅一生

会期:2011/09/16~2012/04/08

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

むろん、三宅一生のファッションとそれを撮影したアーヴィング・ペンの写真はすぐれた作品だが、とりわけ感心したのは、坂茂の会場構成である。これは文句なしに、カッコいい。いつも手前のくびれた小部屋とその後の大空間の接続が気になっていたのだが、うねる紙管の壁でなめらかにつなぎ、その後にスカーンと奥まで見通す分割線が走る。ファッションをいかに見せるかというのが写真やポスターだとすれば、それらのコラボレーションを展覧会においていかに見せるかもまた、よく練られた企画といえよう。

2011/11/23(水)(五十嵐太郎)

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《静岡県舞台芸術公園》

本部棟、野外劇場「有度」、屋内ホール「楕円堂」、稽古場、研修交流宿泊棟など[静岡県]

SPACの建築出身のスタッフに、静岡の舞台芸術公園を案内してもらう。21haという広大な山間に野外劇場、屋内ホール、稽古場、宿泊棟、本部棟が地形に寄りそうように点在している。磯崎新+鈴木忠志コンビだが、《グランシップ》よりも先に始まった施設だ。平地にそそり立つモニュメンタルな《グランシップ》と比べると、強いかたちを前面に見せない、控えめなデザインが対照的である。ほとんどの劇場は傾斜地を利用し、下に降りるかたちでの動線をもつ。磯崎好みのテアトロ・オリンピコの舞台形式を組み込む、楕円堂の演劇空間は、実に個性的である。

2011/11/18(金)(五十嵐太郎)

オープン・スペース2013

会期:2013/05/25~2014/03/02

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)[東京都]

ICCのオープンスペース2013展へ。ペ・ランのムービング・オブジェクトと和田永のオープン・リール・アンサブルは、振動や落下など、ともにシンプルな物理的運動だけで、こんなに美しい作品ができることに驚かされた。前谷康太郎も、アナログでユニークな効果をもたらす。ティル・ノヴァクは、遊園地の幾何学をハイパーにした作品で、建築系におすすめ。心象自然研究所の展示はかわいいし、他の作品も総じてよかった。

2011/11/17(日)(五十嵐太郎)

「建築、アートがつくりだす新しい環境─これからの“感じ”」展

会期:2011/10/29~2012/01/15

東京都現代美術館[東京都]

ヴィム・ヴェンダースによる立体映像、金獅子賞のバーレーン、銀獅子賞のスタジオ・ムンバイなど、ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2010で紹介された多くの作品を展示していた。同じ長谷川祐子が両方の企画に関わっているからだろう。しかし、造船所跡のアルセナーレの赤茶けた空間においてカッコ良かった作品たちが、東京都現代美術館のホワイトキューブに持ち込まれ、規模や仕様が変更されると、相当のインパクトを失うのは残念だった。一方、屋外の平田晃久による制作パヴィリオンは、1/1の建築であり、実際の空間を楽しめる。

2011/11/13(日)(五十嵐太郎)

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『アンダーコントロール』

会期:2011/11/12

シアター・イメージフォーラム[東京都]

すでに政治的な決定により、原発を全廃することになったドイツの原発ドキュメント映画である。賛成とか反対のイデオロギーを出さず、淡々とその内部空間とシステムを描く。原発解体の現場や、廃墟になった原発はすごい迫力である。また建設途中で廃棄されることになった未完成の原発が遊園地に転用された事例では、なかなかシュールな風景が生まれていた。

2011/11/12(土)(五十嵐太郎)