artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

集合施設《みんなの家》

仙台市宮城野区仮設住宅団地内[宮城県]

竣工:2011/10/26

伊東豊雄によるくまもとアートポリス、みんなの家プロジェクトのお披露目で、仙台の宮城野区の公園につくられた仮設住宅地に向かう。一見、普通の小屋に見えるだろう。公園の独立したパヴィリオンとせず、既存の集会所と寄り添うように、ウッドデッキの縁側でつなぐ切妻の木造家屋である。これまでの前衛を抑え、始原の小屋をめざす。

2011/10/25(火)(五十嵐太郎)

「ガラスの動物園」アーティスト・トーク

会期:2011/10/22

静岡芸術劇場[静岡県]

静岡のSPACにおいてダニエル・ジャンヌトー演出の「ガラスの動物園」初日アフタートークに出演した。建築系にはかなり面白い内容だった。壁としての紗幕/カーテンを重ねつつ、物語の進行に応じて空間構造を反転させたり(物語の入れ子構造と呼応している)、照明との関係で透明度を変えたり、風やローソクでカーテンが揺らぐことで特殊な場を生む。さらに衣装や、俳優と床の関係、すなわち靴や裸足などの操作によって、異なる世界の人間が同じ場にいることを強調している。斬新な空間演出をしながら、テネシー・ウィリアムズの原作にはかなり忠実で、むしろそのことによって、「ガラスの動物園」がなぜ時代を越えて、普遍的な古典になりえているかを改めて教えてもらった。シカゴ万博に触れる台詞などは省いていたが。さらに建築への補助線を引くと、ペトラ・ブレーゼや安東陽子など、最近の新しいカーテン、蚊帳、能と幽玄、そしてジャンヌトーが感銘を受けたという豊島美術館(裸足で歩く空間!)が挙げられるだろう。もちろん、演劇にしかできない空間の効果に踏み込む。また視覚的に遮蔽されているがゆえに、紗幕を突き抜ける音の存在感が際立つ。冒頭も母の声が過去の空間に呼び戻すのが印象的だった。

2011/10/22(土)(五十嵐太郎)

あいちトリエンナーレ2013 記者会見/シンポジウム「美術と身体 建築と場所」

会期:2011/10/21

愛知芸術文化センター 12F アートスペースA[愛知県]

愛知芸術文化センターにおいて、筆者が芸術監督をつとめる、あいちトリエンナーレ2013のコンセプトと最初の作家発表を行なった。タイトルは、「揺れる大地─われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活 Awakening─where we are standing ?:earth, memory and resurrection」である。最初の作家発表は、青木野枝、石上純也、奈良美智、名和晃平の4名。主に場所や空間系の作家、あるいは先端的な表現を行なう作家として選んだ。3.11に絡む記憶や復活につながるテーマを作家が展開するには、まだ時間がかかるだろう。この日は、午前の有識者への説明、実行委員会での承認、記者会見、夕方の浅田彰とのトークイベントと、合計4回主旨を説明した長い1日となった。浅田は相変わらず、膨大な知識と反射神経に裏付けられた圧倒的な言語パフォーマンスによって会場を圧倒させた。

2011/10/21(金)(五十嵐太郎)

森美術館「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」

会期:2011/10/20

アカデミーヒルズ49[東京都]

若手建築家とメタボリズムの関係を探るシンポジウムの第2弾である。 藤本壮介は海外でよくメタボリズムとの関係を質問されるが、単位を集積したデザインをしつつも、人がどう振る舞うかに関心があるという。藤村龍至は超線形論と生命の比喩、大胆な構造など、デザインにおける類似性を説明した後、建築家2.0について語った。

2011/10/20(木)(五十嵐太郎)

黄金町バザール2011「まちをつくるこえ」

会期:2011/09/02~2011/11/06

京急線日の出駅から黄金町駅の間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外空地ほか[神奈川県]

ヨコハマトリエンナーレの黄金町エリアをまわる。全体的にアート作品はちょっと弱い。もっとも、あいちトリエンナーレ2010にも出した北川貴好の電球による球体や、同じ素材を2人が撮影する秋山直子/河地貢士のダブル写真は健闘していた。ここは以前と同じ印象だが、圧倒的に街そのものがおもしろい。そして和洋ミックスの竜宮美術旅館には驚かされた。アートを通じて、この空間を体感できたことが最大の収穫だ。

写真は上から、
竜宮美術旅館
志村信裕《lace》(竜宮美術館)

2011/10/16(日)(五十嵐太郎)