artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
洋上のインテリア II
会期:2011/08/06~2011/11/27
日本郵船歴史博物館[神奈川県]
日本郵船歴史博物館の「洋上のインテリア II」展は、近代建築家が手がけた船の内装デザインを紹介する、意欲的な企画である。取り上げられるのは、中村順平、村野藤吾、吉武東里、吉田五十八、剣持デザイン研究所などだ。1929年に浅間丸の内装をイギリスの会社に依頼したことから国辱論争が勃発し、「現代日本様式」のインテリアの誕生につながっていくストーリーは実に興味深い。
2011/09/19(月)(五十嵐太郎)
千代田芸術祭2011 展示部門「3331アンデパンダン」講評会
会期:2011/09/10~2011/09/11
3331 Arts Chiyoda[東京都]
千代田芸術祭2011の「3331アンデパンダン」展の講評を画家のO JUNさんとともに行なう。建築の場合は、敷地やプログラムからある程度、解答の基準を設定できるが、アートの作品は本当に幅広い。出展者とやりとりしながら、普段使わない頭脳を駆使して、なぜこの表現なのかを考えていく。五十嵐賞は、講評を担当した作品ではなかったが、岡崎京子の『ヘルタースケルター』の世界に入り込んだ山田はるかを選ぶ。ほかに最後まで悩んだ作家は、水戸部七絵、藤林悠、内田百合香、大庭彰恵、現代芸術最終兵器研究所だった。山田の作品は、最初に見たときは展示物を触ってはいけないと感じ、なぜ岡崎京子の漫画を置いてあるのか訝しく思い、二度目の訪問時にようやく開いた。そして執拗なまでに劇中の主人公になりきる作業に驚かされる。HPを参照すると、ジェンダーを軸にしたさまざまな制作をしており、さらなる展開の可能性を感じたことが、彼女を選んだ理由である。
2011/09/11(日)(五十嵐太郎)
OMA《マハナコン・タワー》
[タイ]
タイの国際ワークショップのあいだに、現代建築めぐり。ほかのアジアのグローバルシティと同様、ここでも都市のランドマークをめざす、OMAによる超高層ビルのプロジェクト、《マハナコン・タワー》が動いていた。改めて、東京にはもはやそうした活力がないのかと思う。《マハナコン・タワー》は、ミース的な均質空間を崩す、ヴォリュームを分節する帯が螺旋を描きながら駆け上がっていく、ホテル、マンション、商業施設が複合した建築である。
2011/09/11(日)(五十嵐太郎)
せんだいスクール・オブ・デザイン 2011年度春学期特別講座「復興へのリデザイン」最終回「環境に応答する」
会期:2011/09/04
東北大学工学部センタースクエア中央棟DOCK[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザインの「復興へのリデザイン」の最終回「環境に応答する」で、中谷礼仁と宮本佳明をゲストに迎え、司会を務めた。前者は非常時のセットの組み換えによるシステムのリデザインやズレへの態度を、後者は現地への出入りを通じての思考と実践について語る。中谷による、誰もが同じことを急いで行なう必要はなく、自分はじっくりと考えていくという、思考における時間のスケールの長さに共感した。
2011/09/04(日)(五十嵐太郎)
第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展帰国展「家の外の都市の中の家」
会期:2011/07/16~2011/10/02
東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]
東京オペラシティのヴェネチアビエンナーレ帰国展へ。最後に設置された北山恒の壁面模型や廊下の都市比較分析が付加された以外は、日本館の展示内容(アトリエ・ワンの《自邸/事務所》と西沢立衛と《森山邸》)とほぼ同じである。総じて分析的かつ説明的な展示だったが、約1/2の森山邸の巨大模型は、キャプション一切なしで、都市との関係性をもっともよく示していた。
2011/09/03(土)(五十嵐太郎)