artscapeレビュー

「ガラスの動物園」アーティスト・トーク

2011年11月15日号

会期:2011/10/22

静岡芸術劇場[静岡県]

静岡のSPACにおいてダニエル・ジャンヌトー演出の「ガラスの動物園」初日アフタートークに出演した。建築系にはかなり面白い内容だった。壁としての紗幕/カーテンを重ねつつ、物語の進行に応じて空間構造を反転させたり(物語の入れ子構造と呼応している)、照明との関係で透明度を変えたり、風やローソクでカーテンが揺らぐことで特殊な場を生む。さらに衣装や、俳優と床の関係、すなわち靴や裸足などの操作によって、異なる世界の人間が同じ場にいることを強調している。斬新な空間演出をしながら、テネシー・ウィリアムズの原作にはかなり忠実で、むしろそのことによって、「ガラスの動物園」がなぜ時代を越えて、普遍的な古典になりえているかを改めて教えてもらった。シカゴ万博に触れる台詞などは省いていたが。さらに建築への補助線を引くと、ペトラ・ブレーゼや安東陽子など、最近の新しいカーテン、蚊帳、能と幽玄、そしてジャンヌトーが感銘を受けたという豊島美術館(裸足で歩く空間!)が挙げられるだろう。もちろん、演劇にしかできない空間の効果に踏み込む。また視覚的に遮蔽されているがゆえに、紗幕を突き抜ける音の存在感が際立つ。冒頭も母の声が過去の空間に呼び戻すのが印象的だった。

2011/10/22(土)(五十嵐太郎)

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