artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
威尼斯建築雙年展台灣館2000-2010(Taiwan at the Venice Biennale of Architecture)
会期:2011/03/19~2011/05/22
国立台湾美術館[台湾・台中市]
台中の国立美術館へ。ここがサポートするヴェネチアビエンナーレ建築展における台湾館の2000年から10年までの内容を振り返る展覧会である。日本では同じ役割を国際交流基金が担当しているが、同じ主旨の展覧会を開催したらよいのではないか。いい企画だが、予算の関係か、内容が均等に薄かったのは残念。メリハリをつけて、どれかを強調し、例えば、筆者が代表選出の審査に関わった2010年の「休息中」を会場の外に出し、ヴェネチアで実現できなかった当初のアイデア、すなわち空気でふくらむ家具を実現するなど、他にもやり方はあったのではないか。
2011/04/10(日)(五十嵐太郎)
伊東豊雄建築設計事務所《台中メトロポリタンオペラハウス》
[台湾台中市]
竣工:2013年
伊東豊雄事務所の佐野健太の案内により、台中のオペラハウスの現場を見学した。一年前に訪れたときは、地面を掘った穴しかなかったが、現在は大きなフライタワーの鉄骨が2つ立ち上がり、最大高さのヴォリューム感も想像できるようになった。しかも現場の横には、さまざまな曲率があり、もっとも施工が難しい部分のモックアップがつくられており、ユニークな空間体験もイメージしやすい。それにしても、設備のおさめ方が大変そう。力技の建築である。また、敷地のまわりには、すでに投機目的で、オペラハウスを囲むように、タワーマンションが建設されており、この建物が都市の価値をあげるものとして認識されているようだ。
2011/04/10(日)(五十嵐太郎)
「台湾集合住宅的未来予想図」展 関連イベント
会期:2011/04/09
府都(建設会社)[台湾・台南市]
謝宗哲が企画した12組の若手建築家による「台湾集合住宅的未来予想図」展の関連イベントに招かれ、レクチャーを行なう。五十嵐は「漫談日本集合住宅状況」と題して、nLDKなど基本的な住宅事情を説明しつつ、90年代以降の重要な作品をレビューし、南泰裕は日本の若手建築家と自作を紹介した。台湾において90年代はアメリカのポストモダンの影響が強かったが、ゼロ年代以降、日本の現代建築への関心が高まり、会場は満員だった。府都の建設会社のビルの1、2階を用いたギャラリーは、なかなか日本にもない恵まれた展示空間である。そこに主に独立前の30代の建築家が集結し、実際にプロジェクトが予定された2つの敷地に対して、ユニークな集合住宅を提案した。次世代のムーブメントの熱さを感じさせる。謝は、村上春樹の『1Q84』に触発され、ビッグブラザー(おそらく、李祖原?)に代わる、リトル・ピープル・アーキテクツを結成しており、王 、方 、林建華を含む6組のメンバーがそれぞれに別の建築家を推薦し、今回、12組が出そろった。
2011/04/09(土)(五十嵐太郎)
台北・百年印記─魅力古蹟攝影展/文学のナポレオン──バルザック特別展覧会
国立台湾博物館[台湾・台北市]
会期:2011年3月22日~6月19日(台北・百年印記─魅力古蹟攝影展)/2011年3月4日~4月8日(文学のナポレオン)
以前、ここでやっていた近代建築展が素晴らしく、日本の国立博物館でも見習ってもらいたい内容だったので、期待していたが、古建築写真展はハズレ。とくに解説や分類もなく、ただ壁に写真を並べただけのものである。代わりに、思いがけずバルザック展が良かった。展示の方法がカッコいい。十分な原資料がないところを、工夫した空間デザインにより、カバーしている。内容だけではなく、文化の成熟度はこういうところにあらわれる。
2011/04/08(金)(五十嵐太郎)
2010台北国際花の博覧会
会期:2010/11/06~2011/04/25
台北市内(圓山公園エリア、新生公園エリア、美術公園エリア、大佳河濱公園エリア)[台湾・台北市]
とにかく人が多く、室内展示を見ることは、ほぼあきらめた。もっとも、花博だけに、各国の庭園など、屋外展示が多い。パヴィリオンは、植物や自然との関係を表現するもので、その方法はおおむね以下の5パターンに分けられる。第一に、花茶殿のように、自然を眺める東屋という古典的なタイプ。第二に、自然そのものを室内に抱え込んだ空間をつくるもの。例えば、稀少植物を見学できる温室になった未来館。第三に、壁面を植物が覆ったり、屋上緑化を行なうなど、外部に自然の要素を与え、建築と植物の共生を視覚化するもの。例えば、緑の屋根に登ることができる、ドリーム館。第四に、自然の形態を模写したような造形。例えば、サナギのようなチョウ館、6枚の花びらが重なりあうイメージのアロマ館。そして第五に、自然素材の積極的な活用として、木材による大空間を実現した花の夢広場である。パヴィリオンのデザインで、これはというのは少ないが、若手建築家の劉克峰が設計に関わった、発光するペットボトル・ウォールの流行館は目立つ。
2011/04/07(木)(五十嵐太郎)